ドイツまちづくりQ&A  プラン策定と住民参加

 ドイツの住民参加システムについての質問をいただきました。なかなか大きな質問なので一度には説明し切れませんが、まずはBプランの策定手続から説明しましょう。

  • Bプランを策定する手続はどうなっていますか。
  • 市民の参加するチャンスは2回なのですか。
  • 日本の公聴会は住民の言いっ放しですが、ドイツではどうですか。
  • でも、ジルケさんはこうおっしゃっていたそうです。
  • 私もようやくBプラン説明会に参加する機会がありました。
  • その後、そのBプランはどうなったのですか。
  • スーパーのプロジェクト型Bプラン説明会にも参加してきました。
  • 意見が全く出なかったBプラン説明会もあるそうです。
  • 報道機関はどのような形で議論に参加しているのですか。
  • 旧東ドイツではどのようにしてプランが決定されていたのでしょうか。

  • Bプランを策定する手続はどうなっていますか。


    市民の参加するチャンスは2回なのですか。


    日本の公聴会は住民の言いっ放しですが、ドイツではどうですか。


    でも、ジルケさんはこうおっしゃっていたそうです。

    1. 会場設営
      • ボン大学の講堂で開かれた説明会に出席したが、広い講堂に椅子は少ししか用意されていなかったので、住民が集まり椅子が足りなくなった。
      • 学校で開催しているのだから椅子はいくらでも追加することはできたにもかかわらず、椅子が追加されることはなかった。この結果、多くの参加者は長時間立ったまま参加しなければならなかった。
      • 市には、快適な環境で説明会を運営しようという意識がない、と思う。
    2. 議論
      • 議論は何時間でもできる。
      • ただし、役所と住民の議論は噛み合わない。役人が専門用語しか使わないので、住民には理解できないのである。
      • したがって、何時間かけても意見の交換はできない。
    3. 複数案の提示
      • 法律に定められているので複数の計画案が提示される。
      • しかし、提示されるのは役所が実行したい案と欠陥のある案なので、結末は見えている。
      • 住民からも意見は出るが、専門用語でしか回答がない。
      • したがって、住民との対話によって案が修正されることはないと思う。
    4. 専門職
      • 日本の役人とドイツの役人の違いは在籍年数にある。
      • 日本では2〜4年で人事異動になるが、ドイツでは専門職として何年でも同じポジションにいることができる。
      • したがって、ドイツの役人は一定の分野で専門家になり、学者にも近い存在でもある。
      • プロ意識が高いため、住民=素人との『低次元』の対話が面倒になっているのではないだろうか。
    5. ドイツのまちづくりグループ
      • ドイツのまちづくりグループは法律の研究をしている。
      • 役人と対話するためには高度の法律知識が不可欠である。
      • だから、少しも面白くない。
    6. 杉並区のまちづくり
      • 杉並区では、区役所の担当者や商店街の人たちがまちづくり活動に参加している。
      • 役人と住民が協力しあい、十分に対話している。
      • だから、日本のまちづくりは楽しい。

    私もようやくBプラン説明会に参加する機会がありました。

    1. 会場設営
      • 開発予定地は地下鉄駅のすぐそばですが、そこには会場に適した建物がありません。それで、700mほど離れた次の駅にある教会の集会場で行われました。50名以上は入る会場に、約30名が参加した、ゆったりした説明会でした。
      早期参加時のBプラン(目標像)
      図をクリックすると大きくなります
    2. 議論
      • 18時に始まった説明会では、A4の両面印刷のパンフレットが配られました。まず市の都市計画責任者らしき方が、Bプランの早期参加が行われていると説明した後、「ミュラーさんがいい案を作成した」と、担当者を紹介しました。続いてミュラーさんが、プラン案について具体的に説明しました。ミュラーさんによると、一戸建て、二戸建て、テラスハウス、コートハウスと、いろんな住宅タイプを、周囲の住宅に合わせて配置したそうです。説明があったかどうか覚えていませんが、配られたA4のパンフレットによると、階数は周囲と同じく2階建てが基本です。なお、周囲には2階建てに屋根裏階が追加されている住宅もあり(屋根裏階はBプランだけでなく建築法との兼ね合いで決まります)、北側の幹線道路沿いは3階建てが主体です。
      • いよいよ議論です。質問は、後述の3件だけでした。そして、市の「今後も意見を寄せてほしい、たとえばミュラーさんに電話をするなど」という説明で、18時40分頃に解散となりました。
    3. 複数案の提示
      • 説明会に示された案は1つだけで、この点について質問や意見は出されませんでした。ミュルハイム市はルール地方では「住宅都市」とされており、住宅地について安定したイメージがあります。だから、複数の案を示すより、出された意見を検討して取り入れることに力を入れているのかもしれません。
    4. 質問と回答の内容
      • 質問と言えないかもしれませんが、自宅に広い庭があると思われる方から、自分の土地に住宅が計画されているので驚いたという感想が出されました。ミュラーさんからは、「計画できるので提案してみた、これから相談したい」、と説明がありました。最終的に決定したBプランにも住宅が示されているので、その方は住宅を建築できることを了承したものと思われます。
      • 次に、コートハウスとはどのような住宅かと質問があり、中庭と住宅の関係に特徴があることが説明されました。確かに示されたプランにはコートハウスが4戸ありましたが、これは目標像を示したもので、実際のBプランでは一般住宅も建設できる自由度が与えられることも多いはずです。なお、最終的に決定したBプランに、コートハウスしか建築できない用地は見つけられませんでした。
      • プランの中央にある灰色の四角は、既存のスポーツ施設です。ある方が、ここには多くの車が駐車しており、示された台数では足りないのではないかと指摘しました。ミュラーさんは、これから調べて必要な修正を行うと回答していました。

    その後、そのBプランはどうなったのですか。


    スーパーのプロジェクト型Bプラン説明会にも参加してきました。

      会場の机配置と写真の方向
      会場の光景
    1. 会場設営と配付資料
      • 説明会は、建設予定地から100mほど離れた教会の集会場で行われました。学校の教室より広く、机が図のように「コ」の字形に置かれていて、中央に市などの説明者が座り、両翼に住民が40人ほど座れるかな、という感じでした。
      • 開始時刻が近くなると、準備した机とイスでは足りなくなり、参加者らがどこかからイスを持ってきて、「コ」の字の中央部分に並べ始め、100名近くが参加しました。写真でわかるように、立っている人は10名以下でした。
      • 入口でA4の資料が2枚配布されました。1枚はBプランの説明で、計画地区の位置、プランが目ざす目標と構想、スーパーの基本設計(立面3面と断面1面)、Bプラン策定手続きがまとめられていました。もう1枚は、表側で市民への参加が呼びかけられ、裏側は、考えを書いて署名すれば、そのまま早期参加に対する意見として提出できる形になっていました。
    2. Bプランの説明
      • 市から5名、そしてプロジェクト型なので、スーパーを計画した事務所等から3名が説明に見えていました。机配置の図に、発言順に番号を示しています。
      • まず中央の白髪の方が挨拶し、説明会の法的な位置づけについて話されました。この方は、区評議会で互選された区長です。日本の区議会議長と区長を足したような位置づけで、区の顔として参加され、説明会を見まもっていらっしゃいました。
      • 続いて、都市計画局の方が、同じく手続きを中心に説明されました。都市計画局で北区のBプラン責任者のような位置の方ではないか、と思います。
      • 3番目の方は、Bプランの上位にあるFプラン(土地利用計画)と、このBプランの関連を中心に説明されました。4番目の方は、Bプランの内容に関し、特別地区にすることや、売り場面積を1200uまでとし、近隣商品を70%以上扱い、都心への影響を避けることも説明がありました。市の最後の方は記録係で、自己紹介をされただけです。
      • 説明の最後の6番目に、スーパーから依頼されて建物を設計した事務所の方が、具体的な設計について説明されました。駐車場の台数や、屋上緑化の説明もありました。なお、スーパー側からは他に2名見えていて、1名は交通検討報告を作成された方のようで、交通に関する質疑応答で説明に立っていらっしゃいました。もう1名の方は女性で、ほとんど発言がなかったので、記録の方だろうと思います。
    3. 質疑応答
      • いよいよ質疑応答で、会場から多くの意見が出されました。意見を述べた方の、ほぼ1/3は女性でした。
      • 出された意見は、ほとんどが交通に関するものでした。スーパー予定地は幅10m程度の道路に接していますが、この道路は隣接するヘルネ市へとつながる幹線道路で、通勤時などに渋滞もあるそうです。住民は、車で来る客が多いスーパーは、進出してもらわない方がありがたい、と考えているようです。予定地と道路を挟んだ反対側にスーパーがある上、200mほど南にもスーパーがあるので、食料品店の進出を喜ぶ住民はほとんどいないようでした。
      • スーパー側も、それは想定内のようです。そこで、客用の平面駐車場77台に加え、周囲の住宅側から入り易い位置に地下駐車場55台を整備し、地下駐車場は客以外、つまり周辺住民にも利用を認める、という懐柔策を準備していました。
      • 質問への回答は、行政に関することは2番目に説明した責任者の方が、設計に関連することは設計事務所の方が対応していました。日本であれば、3番目や4番目に説明された方も回答に加わるところでしょうが、この2名の出番はありませんでした。交通に関することでは、市の責任者に加え、スーパーの依頼で交通を検討された方が説明に立ちました。

    意見が全く出なかったBプラン説明会もあるそうです。


    報道機関はどのような形で議論に参加しているのですか。


    旧東ドイツではどのようにしてプランが決定されていたのでしょうか。


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