与党の法案審査とドイツ連邦議会

 日本では、2024年10月27日に実施された衆議院選挙の結果、自由民主党と公明党の与党が衆議院で過半数を失い、「少数与党」による政権運営が手探りで行われています。 日本で、与党が「法案事前審査」で国会提出前に法案を固めて「党議拘束」してしまい、国会は形式的な儀式の場となっていることを「おかしい」と思っている私から見ると、この状況は「変革へのチャンス」と見えます。
  ドイツでは、連邦議会で法案がかなり修正されています。もちろん、議会提出前に与党審査がおこなわれますが、それは「第一ラウンド」に過ぎません。議会の委員会審議と並行して法案審査の「第二ラウンド」が行われ、その結果について与党議員の賛否を拘束する党議拘束(ドイツでは"Fraktionsdisziplin"、会派規律と呼ばれています)が行われているからです。
 このように、日本とドイツの与党法案審査の最大の違いは、 日本は閣議決定前の一段階であるのに対し、 ドイツは閣議決定前と委員会審議に並行した二段階で行われることです。法案が国会提出前にほぼ決まってしまう日本と比較し、ドイツの方式に何か参考になる点があると思うので、紹介を試みることとします。
(2024.12.19/2024.12.26更新)
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連邦法が成立するまでと与党の法案審査

 連邦の立法機関は、日本と同じく二院制です。国民の直接選挙で選ばれる連邦議会(下院)と、州の代表で構成される連邦参議院(上院)から成り、連邦政府を率いる連邦首相は連邦議会に選出されます。連邦政府が提出した法案が成立するまでの経過は、通例は以下のようになります。

 連邦政府提出の法律案は(法案の80%近くが、この連邦政府提出案だそうです)、まず連邦参議院に送付されます(基本法第76条2項:なお、第二次大戦後のドイツ東西分裂の影響で、憲法が"基本法"と呼ばれています)。連邦参議院は、詳しい説明が付けられている法案を検討し、修正を求める点を箇条書きにし、連邦政府に意見を表明します。意見を受け取った政府は、各点について検討し、それに対する政府の意見を記し、連邦議会に送付します。つまり、連邦議会が受け取る審議資料は、当初の政府提出法案(詳しい説明を含む)、連邦参議院の意見、それに対する連邦政府の見解、の3種類で構成されています。

 法案等を受け取った連邦議会は、本会議で議論した後、詳しい審議を委員会に付託します。受け取った委員会は議論して詳しく審議した後、法案を修正して議決します。ほとんど修正されない日本と違い、ドイツ連邦議会の修正はかなり広範に及ぶのが普通です。その後、修正を含む委員会審議について本会議に報告され、本会議で議論の後、採決されます。こうして通例、委員会の与党修正案が連邦議会でも可決されます。
 法案を可決した連邦議会は、それを連邦参議院に送付します。連邦参議院は、その法案に同意するか、あるいは両院協議会を求めるかを決定します。両院での協議が求められた場合は、求められた部分に限って両院協議会で議論が続けられます。

 では、この経過のどこで、与党が法案審査を行っているのでしょうか。一つは、法案の議会提出前の段階で、これは日本と共通です。ドイツも日本も議院内閣制を採用しているので、審議を円滑に進めるため、同じような仕組みが採用されているわけです。与党の審査が終了した後、法案は担当する省から他省を含む連邦政府の全体に送られた後、閣議で決定されます。

 もう一つの法案審査は、連邦議会の委員会審議と同時に進行します(以下、ドイツ語版ウィキペディアによる説明を根拠とする既述を下線で示します)この審査は、委員会を鏡で反転させた、いわば「裏委員会」のような存在の連立会派(与党)の作業グループで行われます。連邦議会の当該委員会メンバーを務める与党議員が中心となり、会派代表や担当省と連携し、専門家や利益代表者の関与を求める場合もあります。作業グループの会合は、通常火曜日午前中に行われており、ここで案がまとまると、火曜日午後に会合する与党会議に提出され、承認を求めます。まとまった法案の修正案は、水曜日に行われる連邦議会の委員会への提出が目ざされ、委員会で多数を占めている与党によって委員会で可決されます。その後、連邦議会本会議に委員会審議の報告が提出されて可決され、連邦参議院との間で必要な手続きを済ませると、法律として成立します。(24.12.22)


与党の法案審査に関するQ&A


連邦参議院から修正意見がどの程度出され、どう扱われているのですか。
2回目の与党審査で法案が大きく変わることもありますか。
委員会で可決された与党の修正案が、そのまま本会議に出されるのですか。
与党の1回目と2回目の法案審査は、同じメンバーが行うのですか。
なぜ1回目と2回目の法案審査が必要なのでしょうか。
連邦参議院が合意を拒否し、両院協議会が開かれる頻度はどの程度ですか。

法案審査と法案修正可能性の日独比較


ブログ「ルール地方まちづくり通信」に紹介した議会関連記事

 与党の法案審査に関するページの作成は、ブログ「ルール地方まちづくり通信」を書いていて思いついたものです。ブログの内容をより体系的に整理し、不足している部分を追加しようと、ページ作成に取り組みました。そこで、ブログにある議会に関連する記事にリンクを引いておきたいと思います。すでに上のQ&Aからリンクを引いている記事が主体ですが、記載順に紹介します。(24.12.19)


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