「ドイツのアウトバーン」と言えば、日本では「無料で、速度制限もない」と羨ましがられていました。たしかに整備されたアウトバーン網は素晴らしいものですが、これまで無料で提供されてきたことにはそれなりの理由があり、ドライバーは別の形で負担を求められていました。
そのアウトバーンでも、大型トラックの走行が1995年から有料化され、2005年からは人工衛星を活用する走行距離課金方式(世界初!)になりました。乗用車に対する有料化も2016年に開始される予定で(したが、遅れています)、全ての道路走行に課金すべきだという報告書も出されています。そこで、内情を覗いてみたいと思います。
年月日 | 出 来 事 |
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1989.11.10 | 連邦政府がドイツ国会に「大型トラックによる連邦遠距離道路利用の料金に関する法律」を提案し、審議が始まる。法案は、一部修正の上、3月末に成立する。 |
1990.4.30 | 「大型トラックによる連邦遠距離道路利用の料金に関する法律」が公布される。 |
1990.7.01 | 上記の法律が施行され、料金徴収制度が始まる。 |
1990.7.12 | 周辺国からの提訴を受けたEUの裁判所が、本訴の結論が出るまでドイツは料金徴収を行ってはならないと決定する。 |
1992.5.19 | EUの裁判所が、ドイツの「大型トラックによる連邦遠距離道路利用の料金に関する法律」がEUの規程に反すると決定する。 |
1993.6.19 | EUの交通大臣会議で、道路交通への料金徴収を共同で行う方針が認められる。これを受け、ドイツ、ベネルクス3国とデンマークが、12トン以上のトラックに対して共同で課金することを表明する。 |
1993.10.25 | EUで、トラックへの料金徴収に関するユーロビネット指針(93/89/EWG)が認められる。 |
1994.2.9 | ドイツ、ベネルクス3国とデンマークが、「大型トラックによる特定道路利用への料金徴収に関する協定」を結ぶ。 |
1994.8.30 | ドイツで、協定を基礎とした「協定を実施するための法律」が公布される。 |
1995.1.1 | 12トン以上のトラックのアウトバーン走行に対して料金を徴収するユーロビネット制度が始まる。 |
ポイント | ![]() | ![]() |
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方 式 | 年、月、週、日の期間による利用料徴収 | 同左 |
対象車両 | 18トン以上のトラック | 12トン以上のトラック |
対象道路 | アウトバーン、および連邦道路の市街地以外の部分 | アウトバーン |
年間利用料金 | 年1,000〜9,000DM(510〜4,600ユーロ)の6段階 | 年1,467と2,445DM(750と1,250ユーロ)の2段階 |
年間収入見込 | 11億2100万DM(自動車税を8億7,400万DM減税/1989年データによる推計) | 約7億DM |
【距離制でなく期間】トラックの通行料金は、1995年に「年、月、週、日の期間による利用料徴収」という形で始まり、5年後に距離制になりました。今回の乗用車利用料金は、基本的に「年単位の利用料徴収」です。外国からの車については、年単位に加え、10日間と2ヶ月間の利用料も提供されます。
【対象となる道路】国内の車に対しては、1万3千キロ弱のアウトバーンと、3万9千キロの連邦道路が対象となります。一方、外国からの車は、アウトバーンだけが対象です。
【利用料金】料金は排気量や排気ガスに応じて計算されますが、最高でも年130ユーロで、平均で74ユーロと予想されています。10日間の料金は5〜15ユーロ、2ヶ月間料金は16〜30ユーロです。
【自動車税減税との関係】国内の車にとって重要なことは、同時に自動車税が減税され、結果的にドライバーが連邦に支払う費用は増加しない設計になっていることです。一方、外国からの車には、負担増となります。この点が、EUや周辺国から批判を受けると考えられているわけです。
【連邦の収入】政府は、外国車から年に約7億ユーロの収入があり、経費を差し引いた残りの5億ユーロをインフラ整備に充てられると見ています。一方、野党の推計では、収入は3億ユーロ前後で、道路整備に使えるのは1億ユーロ前後しか残りません。このため、野党は「収入に比較して経費が多すぎる」と、導入に反対してきました。 |
◆ 事業の主目的は、渋滞を半分以下に減らし、交通の流れを改善することです。予測では、2020年までに渋滞が58%減少し、同時に走行距離が15%、交通によるCO2排出が19%、交通事故が7%減少するとされていました。
◆ これは、ドライバーからより多くの金額を徴収することではなく、支払う基準を変えることで達成されます。これまではガソリンなどの燃料と、車の保有に課税されていましたが、燃料課税は大幅に低減し、自動車への税金はなくします。そして、これに代わるのが、道路走行キロに応じて支払う使用料です。
◆ 新システムの特徴は、使用料が柔軟なことです。たとえば朝早く出勤するとピーク時より使用料が安くなり、混雑する道路を避けることでも同じような効果を期待できます。また、排気ガスが少ない小型エコカーと、大型乗用車の間には、10倍以上の料金格差をつけます。当初はキロ平均3セントで、次第に増額し、最終的には平均6.7セントにする予定でした。
◆ このような柔軟な料金設定を可能にするのがGPSシステムで、各車両に無料でユニットをとりつけます。そして、毎月、走行に応じた金額が口座から引き落とされる、と説明されていました。
◆ ドイツを始めとする他のヨーロッパ諸国は、「オランダがどうなるのかを見極めた後に、どうするかを決めよう」、という態度でした。オランダが挫折した今、「では私がやってみよう」という国は、まだ現れていません。 |