建設法典の正式名称は "Baugesetzbuch" で、通例 BauGB と表記されています。全体で250条程度に及ぶ大きな法律で、1986年12月8日に公布されたものです。かつて私は "Bauleitplanung − Recht und Praxis" を「西ドイツの都市計画制度 − 建築の秩序と自由 − 」という表題で翻訳いたしましたが、その時に建設法典の前身である連邦建設法(Bundesbaugesetz:1960年制定、1979年最終改正)の抄訳を収録しました。ここに示した建設法典の訳は、そのときの連邦建設法の訳を基礎とし、その後の改正と、訳出の方針に沿って修正したものです。
1960年 | 1971年 | 1986年 | 1997年 | その後も2004年、2006年、 2013年、2017年・・・と、 改正が継続しています。 | ||||
| −−(76/79年改正) | − |
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連邦建設法が制定されたばかりの1960年代には条文の解釈が安定せず、いろいろ紛争もありましたが、その後、多くの訴訟によって条文の意味が次第に明らかとされてきました。たとえば、第1条第5項に示された多くの事項を見て、「こんなに多くのことを検討して調整する必要があるのか」と思う方もおられると思います。しかし、条文に「とくに」とされていることで明らかなように、ここに書かれている事項は「例示」に過ぎません。したがって、地区の状況によってはほとんど無視できる項目がある一方で、ここに示されていない事項を考えねばならない場合も出てきます。また、第3条第2項には提案を1ヶ月の期間にわたって提出できるという規定がありますが(当初の規定では「異議と提案」を提出できるとなっていましたが、1997年の改正で「提案」だけになりました。ただ、この文言の修正は内容的な変更は意味していません)、この期間後に意見を提出することも可能で、事情によってはその意見で計画の見直しを迫られる可能性もあります。Bプランに関する多数の判決を検討した経験から、私は、第1条第6項の「利害の比較考量」にドイツ都市計画の核心があると考えています。