コロナ対策と自由の制限:ドイツの憲法と判決

 日本では、2020年4月7日に7都府県に対し、新型コロナウイルス対策としてインフルエンザ等対策特別措置法による「緊急事態宣言」が出されました。宣言に先立って国会で議論が行われ、また宣言を受けた記者会見も実施されています。その報道や会見をテレビで見ていて、ドイツの制度との違いをいろいろ感じさせられました。4月16日に「緊急事態宣言」の対象が全都道府県に拡大された後、5月14日には39県における緊急事態宣言の解除が発表され、5月24日には残る都道府県でも解除されました。こうして対策の重点は、第二波以降を視野に「コロナと日常的にどう付き合うか」に移ってきたようにも見えます。
  日本のコロナ対策は基本的に「協力の要請」で、強制力がありません(その後の法改正で一部可能となりましたが、ドイツとは大きな差があります)。一方、 ドイツの対策は「命令」で、個人の行動を制限できる強制力を有し、違反には罰則もあります。この結果、憲法(第二次大戦後のドイツ東西分裂の影響で"基本法"と呼ばれています)基本権として定められている各種の自由との関係が問題になります。当然のように、すでに多数の裁判が行われています。判決は、結果的に「穏当な」結論が多いことは事実ですが、理由づけに「なるほど」と納得できる点が含まれ、勉強になります。もちろん、それまでのコロナ対策に問題点を指摘し、方向を転換させた判決もあります。そこで、この問題に関するドイツ司法の考え方を伝えようと考えました。
 なお、日本のマスコミで流されるドイツ情報にはかなり不十分な点があるので、ドイツの実態も伝えたいと思います。
 私は、主にルール地方のローカル紙を手がかりに、ドイツのコロナ情報を得ています。以下の判決でノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)が多くなっているのは、ルール地方がNRW州だからです。NRW州は、面積でドイツの1割、人口では2割と、ドイツで最も人口が多い州です。高等行政裁判所は各州にありますが、相互に決定を参照しているので、州による判断の違いはほとんどありません。このため、NRW州の判決にも連邦のコロナ対策を転換させる効力があり、その実例も紹介しています。
 なお、私が書いているブログ「ルール地方よもやま通信」に、
コロナ危機に関連する情報をいくつか紹介しています。重なる点もありますが、参考になる点があるかもしれません。
(20.04.07/21.04.06更新)
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ドイツと日本の新型コロナウイルス対策の違い

外出を制限しないドイツのロックダウンは都市封鎖ではない

制度の柔軟度と罰則の有無


新型コロナウイルス対策を巡る判決


コロナ対策による営業禁止と「営業の自由」


オーバーハウゼン市では、劇場の駐車場を借り、カトリック教会の復活祭礼拝が行われました。(Der Westen紙より)

教会やモスクでの「礼拝禁止」と「信教の自由」


マスク義務はほぼ確実に合法


コロナ対策の緩和や延長を求める違憲の訴えを認めず


BW州の小売店への「1人あたり売場面積20平方メートル」という目安は無効


ギュータースロー郡全域へのコロナ地域令の相当性


クラブとディスコへの長期の営業禁止も恐らく合法


リスク地域の住民に対する宿泊禁止の規定は相当ではない


観光目的に限った宿泊禁止は平等とは言えず停止する


飲食店の夜間営業禁止で微妙に異なる判断 − そして2度目のロックダウンへ


クリスマス期の州全体での日曜営業は、コロナのリクスを拡大しかねない


納得できる理由なく店舗の扱いを区別するのは平等の原則に反する


内容が柔軟なドイツの感染保護法 − 1979年改正の考え方


ドイツ基本法の基本権と感染保護法

 まず憲法(基本法)を見ておきましょう。 「日本の『新型インフルエンザ等対策特別措置法』の枠組みでは、自粛要請しかできない、諸外国はどのようにして厳しい規定を可能にしているのだろうか・・・」、「憲法に緊急事態宣言が定められているのだろうか」、などという話しを聞くことがあります。このホームページの「新型コロナウイルス対策を巡る判決」を読んでいただいた方は気づいたかも知れませんが、 ドイツに関しては、憲法の違いはそれほど大きくはありません。


連邦伝染病法の1979年改正と感染保護法

 違いが大きいのは、 日本の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」と、 ドイツの「感染保護法」との間です。よく言われるのが、日本の規定は「自粛」や「要請」で強制力がないが、ドイツなどは強制力がある「命令」であり、罰則もある、という点です。しかし、ここで紹介したい違いは、それではありません。日本では、法律に定められている対策しか実施できませんが、ドイツでは必要な範囲で対策を自由に選定できる点です。その感染症に応じた最も効果的な対策を実施できるので、結果的に負担が少ない対策を選定でき、感染対策と経済を両立しやすいシステムになっている、と考えられます。この可能性を開いたのが、1979年の法改正です。



日本の「新しい生活様式」が学ぶべき点


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