日本の大半の都市ではビル建設時に駐車場整備が必要ですが、ドイツはどうですか。

それでは都心が不利です。何か対策はないのですか。

• おっしゃるとおりです。近年になり、駐車場の整備は都心への車の流入を増加させ、エコロジー的にマイナスであることが問題となっています。駐車場の整備が進み、結果として新たな道路整備が必要になるとすれば、駐車場付置は都市財源への大きな負担になってしまいます。これでは何のための駐車場付置なのかがわかりません。また、駐車場建設の負担が地価の高い都心ほど重くなることにも疑問が出されています。付置義務の結果、駐車場を建設しやすい郊外が発展するとしたら、都市計画的に問題だからです。90年代になり、公共交通の整備された都心では駐車場の付置義務を緩めるべきだという議論が出てきています。
• この問題へ対処するため、フランクフルトは、都心部においては駐車場の建設を付置義務台数の１割に制限し、残りの９割については駐車場建設に替わる負担金を徴収し、それでパーク・アンド・ライド用の駐車場を建設する、という方法を採っています。最近は、集めた費用を公共交通の整備に充てることも行っているそうです。ドイツでは公共交通の赤字を一定の範囲内で市が補填しているので、この方法で公共交通の利用が増えれば一石二鳥だ、ということになるでしょう。都市交通問題はどこの国でも大問題で、画一的に扱うのではなく、都市の状況に応じ、政策の影響を広く考えて扱っていく必要があると思います。
• フランクフルトのような措置がどの程度行われているかは不明です。これは大切な問題なので、次にドイツを訪問する時は情報を集めてみたいと思っています。(97.11.20／97.12.14更新)

ドイツの容積率はかなり低いようですが、都心活性化のためのインセンティブはありませんか。

ドイツは環境対策が進んでいるそうですが、そのきっかけは何ですか。

• 上のような質問をいただきましたが、日本人が知りたいと思う典型的な質問のように感じます。この種の質問に答える方法に少なくとも３つの種類はありますので、回答を３つ載せてみたいと思います。

1. 島国である日本と違い、陸続きであるドイツでは、他民族の侵攻から防衛するため、人々は石や煉瓦で築いた壁の中に集まって生活してきました。だから、住宅には庭はなく、周囲にあるのは石だけ、というのが普通です。そこで、憩いを求める人にとって頼りになるのは、公共の広場や、壁の外に残されている自然、ということになります。もちろん、自宅の窓に花を飾る習慣に見るように、家や町に自然を持ち込む試みも普及しています。花を住宅内から見えるようにではなく、外から見えるように飾るのがポイントです。なお、ドイツで市町村を越えた広域のプラニングが成立したのはルール地方ですが、そのきっかけとなったのは町の間に残されている緑地が失われてしまうことを防ごう、ということでした。一方、日本では自宅の庭に自然をもつ生活が理想とされてきました。戦後には都市化が進みましたが、郊外に広く一戸建ての住宅地が広がってしまい、かえってこの傾向が強まったように思います。住宅の敷地を塀で囲んでいるのは、庭がプライベートな空間として利用されているからで、「外から見ることを考える」習慣はまだ育っていません。このように、島国と外敵の進入する陸続きの違いが、両国の国民意識に差を生んでいるように思います。

2. 上の「ヨーロッパの町では車の排気ガスがひどい、というのは本当ですか」という項目を読んで下さい。ドイツの方が環境対策が進んでいるという面もないとは言えませんが、日本の環境対策も進んでおり、私はドイツの雑誌で「日本の環境対策に学ぼう」という記事を見たことがあります。このホームページの「まちづくり裏表事典」にある「計画なくして開発なし」でも説明していますが、日本人、とくに教養のある方は、日本の欠点を知っているためか「日本コンプレックス」とでもいうものがあるようで、「外国は進んでいる」と思い、良さそうな点を一所懸命捜そうとする傾向があります。ドイツは歴史的経緯のために親日的な方が多く、その格好の対象となってしまい、いろんな「ドイツ神話」を生み続けているようです。環境対策の面でドイツがそれほど進んでいるわけではなく、隣国であるオランダ、デンマーク、スイスに遅れをとっている点もいろいろあるようです。むしろ、ドイツ人の方が「日本の環境対策が進んでいるのはなぜなのだろうか」と知りたがっているかも知れませんよ。

3. 今年（1999年）の大学入試センター試験で、平成６年の環境白書が題材に取り上げられたのをご存じですか。「日常生活から生じる環境負荷に対する国民の意識」という項目で日本とドイツの比較が行われています。それによると、環境問題に対する知識の正確度は日本の方が高く（無関心な人もドイツより多いようですが）、「生活を変えなくても科学が環境問題を解決する」という考え方に対しては、日本の方がはるかに反対が多くなっています。つまり、日本人の方がライフスタイル変更の必要性を感じているわけです。ところが、行動面、つまり環境のために自動車の利用を控えているかとか、ごみの分別に心がけているかということになると、ドイツの方が率が高くなるのです。「問題だ」と思ったら行動するのが普通で、ドイツ人はその普通の反応を示しているのに、なぜか日本人は頭で考えたことが行動に結びつかないのです。だから、問題とすべきはドイツではなく日本なのです。日本ではまだ民主主義が十分には根付いてなく、行政に対しても「お上」意識が残っており、自分で考えようとしない習性が身に付いてしまっているのでしょうか。とにかく、ドイツのことより日本のことを考えませんか。

• あなたには以上の３つの回答のどれが気に入りましたか。どの回答が実態に近いのか、あるいは全く別の回答もあるのか、私にもわかりません。皆さん、私と一緒に回答を捜す旅に出かけませんか ？（99.02.23／99.03.12更新)

日本の生活に慣れていたために、交通に関して戸惑ったり驚いたことがあれば教えてください。

上棟式で屋根の上につける花の飾りみたいな物は何を意味するのですか。

• 上のような質問をいただきました。皆さんもご存知のように、日本の上棟式では厄除けのために弓矢が用いられますが、国によっていろいろです。実は、ドイツの上棟式について私は全く知識がなく、困りました。そこで、メーリングリスト仲間に問い合わせたところ、ドイツ在住の方から親切に次のような回答を寄せていただきました。
• 「ドイツ人に聞いたところ、おっしゃるように、上棟式（ドイツ語で Richtfest）の際に 花輪（Kranz)をつけるようです。建築中の建物が、堅固に無事完成することを願ってつけるそうですが、残念ながら由来はわかりませんでした。上棟式当日は、親戚、近所の人を呼んで、シュナップスなどをふるまうそうです。」
• 花の飾りを Richtkranz と呼ぶことがわかりましたので、私もグリムのドイツ語辞典（1873年）を調べてみました。Richtkranz の説明はありませんでしたが、「Kranz＝花輪」の説明が第５巻の2043ページから７ページにわたって詳しく載っていました。それによると、花輪は「喜び、満了、忠実」などを表すシンボルのようで、中世の領主がしるしに使ったりしたそうです。勝者のしるしの「月桂冠」も、この花輪の一種です。また、カトリックにも関係あるようで、Rosenkranz（バラの花輪）とはロザリオのことです。
• 以上のようなわけで、私には花輪が住宅が無事に建設されることのシンボルとなっているような気がします。なお、グリムのドイツ語辞典を詳細に検討したわけではないので、読み落としている部分があることと思います。正確なことをご存知の方がいらっしゃったら、是非メールで教えて下さるようにお願いします。(98.06.22)