アルボルグ宣言

 ドイツの各都市のホームページを通じて、環境まちづくりを目ざす「ローカル・アジェンダ21(LA21)」を調べていると、よくこの「アルボルグ宣言」に出会います。この「アルボルグ宣言」は、持続的なまちづくりを目ざすヨーロッパ諸都市のローカル・アジェンダに大きな影響を与えており、これからのまちづくりにとって非常に重要な位置にある宣言だと考えられます。しかし、ヨーロッパレベルの会議で決定されたため、わが国では、その存在がほとんど知られていません。その後、1996年のリスボン宣言や、環境問題に取り組む自治体で構成されたイクレイ(ICLEI−持続可能性をめざす自治体協議会、"International Council for Local Environmental Initiatives"の頭文字で、国際環境自治体協議会とも訳される)による宣言が発表されていますが、まちづくりに関してはアルボルグ宣言の方がより具体的内容を含んでいると感じられます。そこで、この宣言を翻訳することにしました。

 アルボルグ(Aalborg)はデンマークのユトランド半島北部にある人口12万人の都市ですが、前文にあるように、宣言の準備ではドイツが重要な役割を果たしており、ICLEIのヨーロッパ事務局所在地も、ドイツのフライブルクです。英語の宣言も調べましたが、なぜか「前文」がありませんでした。この訳は、ドイツ語を主体とし、英語も一部参考にして作成したものです。当初は、ドルトムント市のローカルアジェンダ関連のホームページにあるものを訳す予定で、そこには I.6 までしか掲載されていなかったので、「この程度なら簡単だろう」と思って取りかかりました。ところが、その後、他市のホームページで、 I.14 まであり、さらにUとVが続いていることを知りました。最後まで訳せるのはいつになるかわからないので、中途半端ですが、訳の済んだ I.9 までをアップすることとしました。これでも、ドルトムント市のホームページにある宣言よりは充実しているつもりです・・・。
(06.09.18)
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アルボルグ宣言

持続性をめざすヨーロッパ都市と自治体の宣言

 デンマークのアルボルグにおいて、都市の持続性に関するヨーロッパ会議の参加者により1994年5月27日に決議された。


前文

 アルボルグ宣言(Charter of European Cities & Towns Towards Sustainability)は、持続的な都市と自治体に関するヨーロッパ委員会の参加者によって決議されたもので、会議はアルボルグ市、デンマーク、およびヨーロッパ委員会によって1994年5月24〜27日にアルボルグで開催され、内容的に国際環境自治体協議会(ICLEI)によって整えられた。ICLEIは、責任をもって宣言案を準備し、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州都市発展・交通省と共同で検討した。この宣言は、多くの参加者の考えや表現を反映している。

 アルボルグ宣言は、まず80のヨーロッパの自治体と、253の国際機関、国、研究所や個人によって署名された。憲章へのサインを通じ、都市や自治体は、ヨーロッパの持続的な自治体のキャンペーンを開始し、「ローカルアジェンダ21」のプロセスに参加することを自らに義務づけ、持続性を目ざした長期的なプログラムを策定する。

 宣言案は、アルボルグの会議で、600人以上の参加者により、36のワークショップで議論された。多くの意見や提案が、最終案に反映されている。それでも、憲章起草委員会は、宣言案を修正して多くの基本的で実質的な補充提案を簡単に採用することはできず、検討し議論する必要があると考えている。そこで、今後の活動において、補充提案を整理し、憲章を発展させて、1996年9月にポルトガルのリスボンで行われる持続性をめざす第2回ヨーロッパ都市会議に示すことを提案する。

 (以下略:英語の"sustainable"と"sustainablitity"のドイツ語訳についての説明がある)


T.合意による宣言:ヨーロッパ都市の持続性への道

I.1 ヨーロッパの都市と自治体の役割

 我々ヨーロッパの都市と自治体(本憲章の署名者)は、我々の都市は、歴史的に世界帝国、民族国家や政権の一部であり、それを越えて存続し、社会生活の中心、経済の担い手、そして文化、遺産と伝統の保護者として続いてきたことを宣言する。家族と近隣に加え、都市は我々の社会と国における基本的な要素である。都市は、工業、産業と、教育、行政の中心である。

 我々は、現在我々が行っている都市の生活様式、とくに労働と分業のシステム、土地利用、交通、工業生産、農業、消費、レジャー活動と、その結果としての生活水準により、人類が直面している多くの環境問題に対して本質的に責任が我々にあることを理解する。ヨーロッパ人口の80%が都市に住んでいるので、これはとくに意味が大きい。

 我々は、次の世代のことを考えなくても、現在の工業国家における1人あたりの資源消費が、自然を破壊することなしには、現在生活している全人類に可能ではないことを知っている。我々は、この地球における人間生活は、持続可能で環境に適合した自治体なしでは維持できないと確信している。自治体行政は、環境問題が近くされる位置にあり、市民に最も近いレベルであり、政府と行政が共同して全段階で人類と自然のための責任を担う。したがって、都市と自治体は、生活様式、生産、消費、そして空間パターンが変化する過程で、鍵となる位置にある。

I.2 持続性の概念と原則

 我々都市と自治体は、持続可能な発展という考え方が、我々の生活水準を自然環境の容量を調和させることを助けることを理解している。我々は、社会正義、持続可能な経済システム、そして自然環境の持続的な利用のために努力する。社会正義は、必然的に経済的な持続性と公平さに基づかなければならず、これは環境利用の持続性を必要とする。

 環境の持続的な利用は、自然という資源を維持することを意味する。それは、我々に、再生可能な原料、水、エネルギー資源を消費するスピードが、自然による補充スピードを超えないこと、および、再生不可能な資源を消費するスピードが、持続的で再生可能な資源で置き換えられるスピードを超えないことを要求する。また、持続可能な環境の利用は、汚染物質を放出するスピードが、大気、水および土がこの物質を吸収して処理する能力を超えないことを意味する。

 さらに、持続可能な環境の利用は、生物多様性の維持、人類の健康、および人類ならびに動物と植物の生命と健康状態に将来を確保するために十分な空気・水・土壌の質を確保することを意味する。

I.3 持続性に向けた自治体の戦略

 我々都市と自治体は、都市または自治体は、まず、都市に関係する建築的、社会的、経済的、そして政治的な不均衡、および天然資源および環境に関連し、我々の現代社会に害を与えるものを取り扱うことができる最も大きい単位であると確信している。その一方で、そのような問題を、総合的、全体的で、持続的な方法で合理的に解決することができる最小の単位でもある。各都市には違いがあるので、各々が、持続性に向けた独自の方法を見出さなければならない。我々は、持続性の原則を、政治の全ての場に関係させ、都市と自治体の力に応じ、地域に適合した戦略の基礎とするつもりである。

I.4 創造的、ローカルで、バランスを求める過程としての持続性

 我々都市と自治体は、持続性が単なるビジョンでも、固定した状況でもなく、自治体の意思決定におけるすべての領域に広がる、創造的、ローカルで、バランスを求める過程であると認める。それは、都市行政が、都市のエコシステムを望ましいバランスに導き、何がそれから遠ざけるかにつき、継続的に見まもることになる。都市行政が、このような過程で収集した情報を基礎にすることで、都市は有機的な統一体として理解され、重要な活動の影響が明白なものとなる。都市とその市民は、このような過程により、十分な情報を基礎として決定することができるようになる。持続性を基礎とした行政の過程を通して、現在の利害関係者の利害だけでなく、将来の世代をも考慮する決定を行うことができる。

I.5 外部との段階的な調整による問題解決

 我々都市と自治体は、都市や自治体が、問題を遠いところや将来に追いやることによって解決することはできないことを理解する。したがって、全ての問題や不均衡は、ある都市内においてローカルレベルでバランスをとられるか、または地域か国家レベルで外部の大規模な機関によって取りあげられる。これは、外部で段階的に調整することによって問題を解決するという原則である。この原則を実施することが、各都市に、行動を決定するにあたって多くの自由度を与える。

I.6 持続性に向かった都市経済

 我々都市と自治体は、我々の都市や自治体の経済的な発展を制約する要素が、自然資源(大気や、土壌、水、森林)になったことを理解している。したがって、我々はこの資源に投資しなければならない。これを優先する順序に述べる:

  1. 地下水のストック、土壌、希少種の生息空間などの、残存している自然資源への投資。
  2. 再生できないエネルギーの利用などの、既存の利用を縮小することによる自然資源の発展の促進。
  3. 自然の森林への負担を減らすための都心公園などの、文化的、自然的な自然を拡張することにより、自然資源への負担を縮小するための投資。
  4. 省エネルギー建築や環境に優しい都市交通などの、最終消費者に至るまでの生産効率の向上。

I.7 都市の持続性の前提としての社会的公正

 我々都市と自治体は、貧困な者が最も強く環境の負担(交通による騒音や大気汚染、快適さの不足、不健康な居住状況、空地の不足など)に苦しみ、それらを最も解決できないことを知っている。富の不平等な配分が、一方では環境に害を与える行動を引き起こし、他方では行動の変化を困難にしている。我々は、人々の社会的な基礎的需要、健康の維持、雇用と住宅供給を、環境保護と統合することを意図する。

 我々は、持続可能な生活様式の初の体験から、単に消費を最大にすることに代わり、このようにして市民の生活の質を向上させることを学びたいと思う。

 我々は、共同社会の持続性に貢献し、その結果として失業を減少させるような雇用を創出するよう試みる。企業を誘致したり、職場を創出する努力において、フルタイムの職場を創造し、長寿命の生産を持続性の原則に適合させるように促進するため、持続性に対する営業の考えを影響を検討する。

I.8 持続可能な土地利用パターン

 我々都市と自治体は、すべての計画に関する戦略的な環境評価を含んだ、自治体による効果的な土地利用と地区計画の意味を認識する。我々は、効率的な公共交通機関と、効果的なエネルギー供給の機会を利用すると同時に、より高い建築密度を提供すると共に、その際には人間的な建築密度を維持するべきである。市街地における都市健全化プロジェクトの実施でも、新たな郊外の計画においても、交通需要を低減するために用途の混合に努力する。地域における適切な相互依存の考えにより、都市と農村の間における流れのバランスをとり、都市が周辺の資源を単に利用するだけであることを防止することを可能にするべきである。

I.9 持続可能な都市交通パターン

 我々都市と自治体は、交通量を低減すると共に、それと同時にアクセスの質を改良し、社会的な福祉と都市の生活様式を維持するように努力する。我々は、持続可能な都市は、強いられる交通を減少させることが不可欠で、不必要な車使用を終了することを促進し、支援しなければならないことを知っている。我々は、エコロジー的に負担が少ない交通手段(なかでも徒歩、自転車、公共交通機関)を優先させ、これらの手段を組み合わせることをその計画の中心に置くつもりである。マイカーによる交通には、補充的な役割だけを与えるべきで、公共交通の利用を容易にして、都市の経済活動を正常に保つべきである。

以下、準備中
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