日影規制Q&A / 項目一覧 |
---|
(第72国会 衆議院建設委員会議録第18号、74.05.24、p.5)
すなわち日影でやると申しますのは、日照権問題というとらえ方ではございませんで、むしろこの過密の都市でこの日当たりという資源をいかに公平に分配し、しかもそれを町のいい形につなげていくか、かような町づくりのルールとして日照基準はあるべきだというふうな審議会のお考えもございます。私どももそのとおりだと思います。
(衆議院建設委員会議録第18号、74.05.24、p.6)
私どもは、この改正にあたりましては、こういう日照権の有無という立場ではなしに、そういうものは今後の判例の積み重ねなり議論の積み重ねによって国民がきめるべきものでございますので、そういうふうな立場ではなしに、先ほど申し上げましたように、日照というものは都市の整備の上でも大事だ、したがって、日照紛争を解決すると同時に、今後子孫に残すべきいい町づくりのルールをどうするか。日照というものは、日照だけではございませんで、そのほかの風害とか環境とか、そういうものの代表的な指標でございます。したがって、これをとらえて、これの上に一つの都市づくりのルールをつくる、それによって日光を公平に受けられるというふうな結果を招き、この紛争をできるだけ解決する、かような考え方でやってきたわけでございます。
(第75国会 衆議院建設委員会議録第20号、75.06.18、p.7)
先生おっしゃいますように、従来はそういうような判例の積み重ねによってそういうようなものがだんだん明定されていく。いわば日照権というようなものが確立されるのは、判例の集積をまって相隣権として確定されるべきものだ。しかし、それをまつにはなかなか大変だという気持ちがわれわれございます。したがいまして、そういう日照のことも考慮した市街地の良好な整備をしたいということでございまして、同時に日照だけを守るというつもりではございませんで、良好な環境のものをつくりたい。そのためには公法的に最低の基準を定めたいというのが今回の改正の趣旨でございます。従来どおり相隣的なものといたしまして裁判の判例をまつというのも一つの方向かと思いますけれども、やはりそういうようなことで最近のように激化しております、そういうような紛争の状況を見ますと、特に住居の安寧を守らなければならないような住居系の地域につきましてはそういうふうな公法的介入も必要だということで、建てる側、建てられる側、両方の合意が得られるような基準を定めたというようなつもりでおるわけでございます。
(第75国会 衆議院建設委員会議録第20号、75.06.18、p.9)
今回の規制によりまして、日照を市街地環境の総合的な指標の一つとして確保をするということを意図しております。この規制を新たに付加することによりまして、住居系の地域におきます単に日影の規制のみならず、通風、採光、プライバシーの保護といった面でも良好な環境の住宅地になるだろうと考えております。
なお、風害等の防止のための制限を定めていないじゃないかという点がございまけれども、今回制度的、技術的な問題がやっとわれわれとしては解明されたと思っております日影の基準を入れたわけでございまして、今後とも風害その他電波障害等いろいろございますが、そういうものには積極的に検討を重ねてまいりたいと思っております。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.3)
(質問:それから次に、商業地域及び工業地域を規制からはずしたということについては、どうしてはずしたのですか。)
今回公法的な日影の規制を導入しようと考えたのは、主として住居系の地域でございます。それから近隣商業等につきましては、やはり住居系の地域に連なるところを想像いたしております。商業地域は都市計画法で定めておりますとおり、主として商業の利便を増進するということのために定める地域ございまして、建蔽率、容積率等も高く定めておるところでございます。したがいまして、公法上の日影の規制を直ちにここに適用するのはいかがと考えたわけでございます。
ただ、商業地域でもいろいろと日照の紛争はございます。今後判例の積み重ねによりまして相隣権的に日照が保護されていくだろうとわれわれは想像いたしておりますが、判例の動向によりまして、商業地域にも日影規制が必要だということになりました場合には、その段階で検討すべきであろうと考えております。現段階では住居の安寧を守るということを主にしております住居系の地域には、少なくとも公法的な規制を及ぼす方が妥当だと考えた次第でございます。
(質問:商業地域、工業地域。これは工業専用地域なら私は話がわかるような気がするのです。商業地域でも工業地域でも住宅があって人間が住んでいます。特に商業地域の場合には、家が密集していて、一番日照問題については必要な地域のわけです。商業地域だから人間は住んではいけないということはないわけでありますし、現実に見た場合に、この商業地域の場合にも相当人が住んでいる。しかも、日照を受ける率というものが一番環境上少ない。その地域をはずしている。ですから、いま言われたように、何の積み重ねでどういうふうに解決していくというふうに言うのですか。もう少し具体的にひとつ……。)
今回日影の規制を公法的に取り入れようということで取り入れておりますけれども、これはいわゆる日照権を全般的に確保しようという趣旨ではございませんで、日照を確保しながらその他の通風、採光、プライバシー等も守りながら環境のいい住宅をつくっていくための公法的な規制を行おうというものでございまして、元来日照権そのものは相隣権的なものだと考えております。したがいまして、そういうものにつきましては、幾多の判例の積み上げによって相隣権として確立されるということが日照権そのものの本質であろうかと思っております。しかしながら、それを待っておりましたのでは、最近のような住居系地域におきます紛争はますます熾烈になってまいりますので、そういうものを念頭に置いた公法的規制が必要だと踏み切ったわけでございます。
したがいまして、商業地域におきましては、実は私どもの監督いたしております住宅公団でも、現在札幌で商業地域内で日影の問題で裁判中のものがございます。それらのものにつきまして、いろいろな判例等が積み重なっていくと思いますけれども、その暁に、そういうふうな相隣権的なものとしまして商業地域におきましても日影の問題が解決されていく、これには相当時問がかかると思います。しかし、それまでの間も、やはり商業の利便を増進するということが主な地域でございますので、もちろん地域、地区の指定の仕方の問題もあろうかと思いますけれども、当面公法的に介入するのはやはり住居の安寧を確保するというところに限るべきであろうということで、現在は住居系の地域に限っておるということでございます。
(第77国会 衆議院建設委員会議録第10号、76.05.21、p.4)
今回の日影規制にかかる部分の問題につきましては、これは住居系の地域が都市計画上住居の安寧を確保すべきところということになっておりますので、そういうところを中心に規制をしたいという趣旨でございます。商業地域におきましては、都市計画上商業の利便を増進するために定める地域でございます。したがいまして、当面は今回の法案の対象外ということになっておるわけでございますが、商業地域におきましても住宅が現に存在しております。日照が全く不必要であるというふうには思っておりません。しかし、都市計画の趣旨に照らして見れば、公法上の規制の対象ということではなくて、個々具体的な相隣関係の問題として解決すべき問題であると考えております。
(質問:そういうふうに突き放されると困るわけで、建設省としても商業地域に住んでおられる方についての善処方をもう一遍要望しておきたいと思います。)
商業地域につきまして相隣関係を尊重すると申し上げましたのは、今後判例の積み重ね等が行われていくだろうということでございます。その途中の経過におきまして、住居系とは違った内容でこういうふうな日影の規制が必要であるという時期が参りましたならば、われわれとしても当然検討しなければならぬ時代が来ると思います。
(第78国会 参議院建設委員会議録第4号、76.10.26、p.7)
次に、しばしば問題になりますのは規制対象地域の問題でございます。修正案を見てまいりますと、いわゆる商業地域、工業地域、こういった地域は規制対象地域から除外されておりますが、しばしばこれが問題になります。商業地域でなぜ規制対象から外したかと申すわけでございますけれども、これは物事の判断が逆ではなかろうかと。私は土地利用計画の専門でございますので申しますと、商業地域の指定の仕方がまずいんじゃなかろうかと、こう考えております。または工業地域の指定の仕方が問題ではないか、まずいんではなかろうかと、こう考えております。現実見ますと、非常に各都市とも商業地域の面積が必要以上に大きい。また、それによりまして容積率の指定も非常に高いわけでございます。商業地域を指定しますと、最低の容積でも400%ということでございますが、私が現実に商業地域を見てまいりますと、なぜこういうところを商業地域にしたのかと、近隣商業地域でもいいではないか、または住居地域でもいいではないかと、こういったところがむしろ住民の要望によりまして商業地域に指定されている、こういった現状でございます。むしろ今後商業地域の指定は非常に商業の専用化といいますか、そういった方向に向かうべきではなかろうか、こう考えております。
時間がありませんので、最後に、さらに若干補足いたしますと、規制対象地域を今後指定する場合におきましては、いま申しましたように、あわせまして用途地域制の再検討、さらに容積率の再検討ということをぜひ行う必要があるんではなかろうかと考えております。はっきり申しまして容積率200%以上では日照は確保できません。容積率300%、400%指定しながら、一方では十分日照時間を要求するのは非常な矛盾でございます。ですから、日照時間を十分に確保したければ容積率をせめて200%、さらによければ150%以下に下げる、こういったことが必要ではなかろうかと考えますと、先ほどもお話がございましたように、この規制方式だけでは日照問題は十分に解決されません。でありますから、そのように容積率の低下、さらに現在ございます高度地区の制度の再検討、より厳しい高度制限をかける、さらに必要に応じましては、住民が非常に日照時間を要求すれば、やはりこれも現在ございます建築協定、こういったものを十分活用すれば、この規制方式だけでは不十分な日照問題を補うことができるんではなかろうかと、こう考えております。
(第78国会 参議院建設委員会議録第4号、76.10.26、p.8)
それからこの改正案によりまして、日影の規制か新しく加わってまいりますので、従来の指定、すなわち地域別による指定によります日影の関係は相当変わってまいりますので、相当地域の改定等が必要であろうと思います。従来の用途地域の指定の場合の関係住民の意見は参酌しておりますか、そこまで考えておりませんので、今度の改正によりましてやはり用途地域の改定等が早晩行われると思います。その場合には、そういうこともよくお話をして慎重にやるべきだろうと思います。逆な言い方をしますと、現在でも出ているのでありますが、日影ばかり考えまして何でも第一種住居専用地域に指定をしてもらって後からしまったという例も間々聞いておりますので、そういう点もよくお考えを願いたいと思います。
(第78国会 参議院建設委員会議録第5号、76.10.28、p.19〜20)
(質問:用途指定を見直して今後の日影規制ですね、これが適用されるされるような見直しを行政指導の面でおやりになる用意があるのかどうか、この点をお伺いします。)
お答え申し上げます。用途地域に関します都市計画は、先生御存じのように都市活動の機動性ですね、それから都市生活の安全性、快適性、利便性、そういったことの増進という意味合いを考えまして、土地利用の総合的な計画としていまつくっております。手続としましては、御存じのように都道府県知事なりあるいは市町村が公聴会あるいは都市計画の案の縦覧という手続を通じてやって、その間民意を反映するということにしております。したがいまして、前段で申し上げましたように、安全性、快適性ということも配慮をいたしまして計画をつくっておるわけでございますから、住環境の確保といった点につきましては、当然その計画の中に織り込まれているというふうに私どもは考えております。したがいまして、今般日影規制の制限が行われまして、即用途地域の見直しということにはつながらないじゃないかというふうに考えております。
(質問:見直しにはつながらないと、じゃ台東区なんかの場合どうなりますか、こういうケースですね。)
台東区のお話が出ましたが、いま御指摘がございましたように、確かに台東区、大部分が商業業務施設が立地し、したがいまして商業業務施設の立地を許容すると同時に、ある地域におきましては、台東区の中のある地域においてはそういう集中立地をさらに助長すると、こういった意味合いで商業地域の指定をしております。商業地域の指定というのは、これは用途地域全般について言えることでございますけれども、現状それからその地域の将来の発展の動向、それをどういうふうに持っていくか。そういった意味合いから、現在の状況等を将来どういうふうに持っていくかということをにらみ合わせてつくっておる問題でございますから、いまの日照の問題が出ましたけれども、日照確保という観点、これは私どもが前段で申し上げましたように、計画の中にも相当織り込まれておると思っておりますので、日照確保の観点から直ちにこの商業地域をほかのものに変更するということについてはどうかなという気がいたしますし、商業地域をすぐほかの地域の方へ変更いたしますと、そこでまた建蔽率の問題であるとか、あるいは許容されざる業態がほかの地域に入り込むということになりましていろんな問題が出てまいります。現在そういうことでございます。
(質問:どうも都市局長は、商業地域、台東区についても何もおやりになるつもりはなさそうですが、住宅局長はいかがですか、こういう台東区なんかのケースについて。)
都市計画というのは、やはり台東区だけを考えておるものではないと私は思います。東京都全体を考えまして、その中で商業系のところはあちらへ集まっております。工業系の方はもう少し南の方に集まっております。それで、それらのことを加味いたしまして、都市全休の問題としての問題だろうと思いますので、私もやはりたとえば住居の安寧を図るべきところ、という住民の皆さんの同意によりまして、公聴会等による結論を経まして決まっている地域地区制、たてまえ論といたましてはやはりそちらが先行して、その中でやはりいろんなものが追っかけていくというふうにまず考えるべきであろうと思います。しかし、全体の問題といたしまして、容積率設定等の際に若干そういう配慮の足らなかった点もあるというような参考人のお話もございました。それらの点は今後地方公共団体におきまして十分御検討なさる問題であろうかと思います。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.9)
(質問:その午前8時から午後4時まで、これをわれわれ有効可照時間と呼ぶのではないかと思うのですが、それをとった根拠は一体どこにあるのか、こういうことを聞いているのです。)
これは建築審議会でいろいろ御検討いただいたわけでございますが、午前9時から午後3時まで6時間、それをはかる、それから午前8時から午後4時までの8時間をとる、いろいろな方式があろうかと思いますが、建築審議会では、むしろ朝日というものを住民の心理的な問題として非常に重視する調査結果が出てまいりましたので、そういった意昧で、午前8時から午後4時までの8時間をとったということでございます。
(質問:結局、言い得る根拠というのは心理的なものだ、そういうことですか。)
そういうことを加味してとったということでございます。
(質問:そういうものをとりながら、その間どこでもいい、3時間とかあるいは4時間ですね、日照時間として認めているのは。では今度、このとり方の科学的根拠は一体どこにあるのですか。)
これにつきましても、建築審議会の中で、いろいろな日照に関する住民の意向調査というようなものをいたしました結果、必ずしも正午の日照と、それから午前の日照と午後の日照というものに対して心理的に差はないというような結果が出てまいっております。
(質問:おかしいじゃないですか。先ほど有効可照時間をとるときは、心理的には朝日が大事だという調査結果が出ているから午前8時にしたんだ、こういう話をされながら、その間で3時間なり4時間なりの日照時間をとる場合には、これは朝だろうが昼だろうが午後だろうが、そう心理的に影響がないということで、どの時間帯でもいいんだ、とにかく3時間、4時間とりなさいということにしたんだと、全く矛盾するじゃないですか。これどう説明しますか。)
通常の場合でございますと、ちょうど正午ごろの日、お日様が熱量、そういった面から非常に強いわけでございまして、むしろそういった熱量的な考え方を取り入れるべきじゃないかというような議論もございます。ところが、先ほど申し上げましたのは、午前中でも正午の日でも、それから午後の日でも、とにかくその時間帯によって心理的な差はないということでございますので、そういったことにしたわけでございます。
(質問:それじゃ、あなた先ほど朝日を非常に強調されたのは、それはどういう根拠なんですか。住民の心理としては一日のお日さんのうちではやはり朝日を一番大事にするようなお話でしたでしょう。それならそこへ重点を置けばいいじゃないですか。)
通常の考え方でございますと、先ほど申し上げましたように、正午の日というものが非常に有効だろうというようなことでございましたが、調査の結果、むしろ朝日についても、その朝の1時間と正午の1時間というものに対して差がなかったということでございます。
(質問者:結局、ここに計算された日照時間というのはさしたる科学的根拠はない、一般的常識で言えば、お昼のお日さんを一番大事にするんじゃないかと思って、いろいろ住民の意向を調査したら、朝日の方がよいということになった。結果的には1日どの時間でもいいんではないかというふうな形がこの表に出てきているんじゃないかと思うのですね。そういう点ではいまの御答弁そのものが非常にあいまいだ、唯一の根拠と言えば審議会があるからというだけのことじゃないかと思うのですね。)
(第78国会 参議院建設委員会議録第4号、76.10.26、p.5)
次に、最後に時間帯の問題に触れます。改正案では午前8時から午後4時の間の日照を問題にしておりますが、午前9時ごろまでの日照、午後3時以降の日照は有効な日照と認めるには余りにも弱々しい日照である。時間はあるけれども実際太陽は薄いということであります。多くの自治体の要綱が午前9時から午後3時までの間の日照を問題にしてまいりましたのもこのためであります。したがって、時間帯のとり方は午前9時から午後3時の6時間とすることに合理性を認めていただきたい。また、実態がそのようになっております。
基準種別 | 確保されるべき日照の目標値 | 敷地外5m以内におさめる日影 | 敷地外10m以内におさめる日影 | 日影の計り方(地盤面からの高さ) |
---|---|---|---|---|
第一種 | 1階で4時間 | 3時間 | − | 1.5m |
第二種 | 1階で3時間 | 4時間 | 2.5時間 | 1.5m |
第三種 | 2階で4時間 | 3時間 | 2時間 | 4m |
第四種 | 2階で3時間 | 4時間 | 2.5時間 | 4m |
第五種 | 2階で2時間 | 5時間 | 3時間 | 4m |
(い) | (ろ) | (は) | (に) | (ほ) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
地域又は区域 | 制限を受ける建築物 | 平均地盤面からの高さ | 日影時間(敷地境界線からの水平距離が10m以内の範囲) | 日影時間(敷地境界線からの水平距離が10mを超える範囲) | ||
一 | 第一種住居専用地域 | 軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物 | 1.5m | 4時間 | 2.5時間 | |
二 | 第二種住居専用地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m | 4時間 | 2.5時間 | |
三 | 住居地域又は近隣商業地域若しくは準工業地域のうち特定行政庁が都市計画地方審議会の議を経て指定する区域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m | 5時間 | 3時間 | |
この表において、平均地盤面からの高さとは、当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。 |
第56条の2(日影による中高層の建築物の制限)第4項
地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地利用の状況により必要と認める場合においては、政令で定めるところにより、条例で、別表第三(に)欄及び(は)欄に掲げる時間に代えて、これと異なる時間を定めることができる。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.2)
(質問:どうして中間報告は五段階で今度の法の改正については三段階にしたのか、その点について明らかにしてください。)
先生のお話のとおり、答申によりますと1種から5種までということでございました。その際の1種、2種が対応いたしますのが第一種住居専用地域、3種、4種、5種が対応するのが第二種住居専用地域、それから4種、5種が対応するのが、住居地域、近隣商業地域、準工業地域内の指定区域というふうに、おおむね答申の区別はなされておると思います。
しかしながら、現実の問題といたしましては、たとえば第一種住居専用地域では、1種、2種ございますけれども、日照3時間を確保という意味の第2種の基準を中心にいたしまして条例で上下をつける、第二種の場合にも、3、4、5が対応いたしますけれども、一番普遍的と思われます真ん中の第4種を採用いたしまして、上の3種、下の5種につきましては条例で上げ下げできる、それから、住居地域等につきましても、4種、5種でございますが、5種を中心にいたしまして上下に一ランクずつ上げ下げできるというふうに考えた次第でございまして、これで見ますと、答申で対応を考えておりました第一種住専の1種、2種が3種まで含まれるということになりますし、それから、住居地域等では、4種、5種と考えておりましたのがさらにもう一段階下まで入っておるということでございまして、担当幅広い規制ができるようなことも念頭に置きつつ、一番平均的に適用されると思います中位の数字を基準として採用したいということでございます。
(質問:いま言われました政令で定める上下はどのくらいに考えているのですか。)
日影規制には2種類ございますが、いまの一つの方の、単体といいますか、自分の方からだけの日影につきましては上下1時間というのを考えております。それから複合日影がございます。複合日影の基準につきましては、上下30分というのを上限、下限として条例で付加もしくは強化できるようにしたらいかがというふうに政令案としては検討しております。
(質問:そうなってまいりますと、一種住居専用地域は1階で3時間でありますから、中間報告の、1階で4時間まで含まれる、そうなれば1種の方も入るという説明でありましたけれども、その逆に今度緩和の方を1時間ということになると、日照は2時間になるわけでありますから、その面については悪くなるわけだ。それから住居地域は、これは2時間でありますけれども、それを上下して下へ下げると、2階で1時間、こういうことになるわけでありますから、これも悪くなる。
ですから私は、いい方はちょうど1時間上げていくとよくなるわけですけれども、1時間悪くなる面が出てくる、そうなっていくと、この中間報告よりも1ランク下がっているんじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。その点はどういうふうにお考えなんですか。)
最初のときから、第一種住専につきましては、大体答申の1種、2種が対応すると考えておりまして、実際問題の第一種住居専用地域の、たとえば東京におきます日照を享受している過去の例等を見ますと、その3分の2ぐらいが確保しているところがおおむね3時間日照ということだと思います。したがいまして、その基本の3時間をまず適用していただきたいと考えて第1種を3時間ということにしたわけでございますけれども、やはり地方自治体の実状、それからやはり全国的には経度、緯度等も違います。それらのことを勘案いたしまして上下1時間のアローアンスを設けたということでございまして、むしろ答申の種別を幅広く活用させていただいたという基準になっておるわけでございます。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.7)
ただ、今日の基準につきましては、大まかなところ、現在までの良好な地域に住んでいらっしゃる方々の日照時間の3分の2程度を大体念頭に置いて審議会の方でも答申をつくられたということでございまして、両方から少しずつ文句を言われますけれども、客観的に見ますと、そういう意味ではかえって正鵠を得たのじゃないだろうかとわれわれ思っている次第でございます。
(第77国会 衆議院建設委員会議録第10号、76.05.21、p.2)
すなわち原案は、日影による中高層の建築物の高さの制限について、法律で、対象区域、日影時間等の基準を定め、なお日影時間については、地方公共団体は、政令で定める範囲内で、条例でこれを強化しまたは緩和することができることとしておりますが、地方公共団体の自主性を尊重するため、これを改め、対象区域、日影時間については、法律に定める基準のうちから地方公共団体が条例で指定することとしております。
(い) | (ろ) | (は) | (に) | |||
---|---|---|---|---|---|---|
地域 | 制限を受ける建築物 | 平均地盤面からの高さ | 敷地境界線からの水平距離が10m以内の範囲における日影時間 | 敷地境界線からの水平距離が10mを超える範囲における日影時間 | ||
一 | 第一種住居専用地域 | 軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物 | 1.5m | (一) | 3時間 | 2時間 |
(二) | 4時間 | 2.5時間 | ||||
(三) | 5時間 | 3時間 | ||||
二 | 第二種住居専用地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m | (一) | 3時間 | 2時間 |
(二) | 4時間 | 2.5時間 | ||||
(三) | 5時間 | 3時間 | ||||
三 | 住居地域、近隣商業地域又は準工業地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m | (一) | 4時間 | 2.5時間 |
(二) | 5時間 | 3時間 | ||||
この表において、平均地盤面からの高さとは、当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。 |
その後、1992年の都市計画法及び建築基準法の改正で、用途地域が8種類から12種類に細分化されました。細分化の重点は住居系用途地域にあり、3種類から7種類と、倍以上になっています。同時に、用途地域を指定していないところでも日影を規制できることとなったため、日影規制の表がかなり変わりました。さらに、2002年の建築基準法改正で、平均地盤面からの高さに「6.5m」という値が追加され、現在は次のような表になっています。なお、上の表と同じく、複雑になるのを避けるために北海道の規制値を割愛しております。
(い) | (ろ) | (は) | (に) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
地域 | 制限を受ける建築物 | 平均地盤面からの高さ | 敷地境界線からの水平距離が10m以内の範囲における日影時間 | 敷地境界線からの水平距離が10mを超える範囲における日影時間 | |||
一 | 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域 | 軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物 | 1.5m | (一) | 3時間 | 2時間 | |
(二) | 4時間 | 2.5時間 | |||||
(三) | 5時間 | 3時間 | |||||
二 | 第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m又は6.5m | (一) | 3時間 | 2時間 | |
(二) | 4時間 | 2.5時間 | |||||
(三) | 5時間 | 3時間 | |||||
三 | 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4m又は6.5m | (一) | 4時間 | 2.5時間 | |
(二) | 5時間 | 3時間 | |||||
四 | 用途地域の指定のない区域 | イ | 軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物 | 1.5m | (一) | 3時間 | 2時間 |
(二) | 4時間 | 2.5時間 | |||||
(三) | 5時間 | 3時間 | |||||
ロ | 高さが10mを超える建築物 | 4m | (一) | 3時間 | 2時間 | ||
(二) | 4時間 | 2.5時間 | |||||
(三) | 5時間 | 3時間 | |||||
この表において、平均地盤面からの高さとは、当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。 |
(第77国会 衆議院建設委員会議録第10号、76.05.21、p.3)
(質問:一つは、条例で定めることができると実質的にはなっておるわけなんでありますが、そうすると、自治体としては条例を定めなくてもよいのか。それからもう一つは、たとえば一種住専の場合に、ここは日影が三時間、この地域は日影が五時間でもよい、こういう形でもう少し細かく区域に分けて定めることができるのかどうか。これは修正案の解釈の問題でありますけれども、これをひとつ。)
井上議員:私どもは地方自治というのは、住民の自主的な意見ですべておさめていくのが自治体の本旨だろうと思います。ただしかし、その場合に、ただいま全国各地で日照権が問題になっておりまして、これが行政当局と非常な摩擦を起こし、行政当局が困惑しておる実状がございます。これも一つには、法律の中に日影に対する、あるいは日照に対する考え方が示されていないところに原因がございますので、一応基準は定めるけれども、その基準によるかよらないかは自治体の御自由にしてございます。同時に、北は北海道から南は沖縄までございまして、日射の強さの差もございますし、またお日さんの角度の相違もございますので、したがっていろいろと時間差を設けまして、自治体が自由に使うことができる、しかもその一つの自治体の中におきましても、御承知のように、地形あるいは環境によりまして差がございますので、日影時間についても差があってしかるべきではないか。したがって、それらの選択はひとつ御自由にしていただきたい、これは条例で決めていただきたい、こういう考え方でございます。
(質問:そこで、今度は建設省に、これは修正になっておらない部分に関係をするわけなんですが、そうすると、一種、二種などのいま条例で指定し得る地域で指定をされなかった、いわゆる白地地域になっている地域と、それから今度の日照の確保のための基準で指定ができないことになりました商業地域、これも白地地域ですが、それとは法的には同じような地位にあるのかどうか。その辺を……。)
山岡政府委員(住宅局長):修正案の内容によりますと、同様であろうと思います。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.9)
それから1.5mと4mでございますが、1.5mは1階の窓の平均的な真ん中、それから4mは2階の窓の真ん中というような形でとったわけでございます。
(第78国会 参議院建設委員会議録第5号、76.10.28、p.9)
(質問:ということになると、あれですか、1.5m以下、0mから1.5mの間は日陰になってもやむを得ないという解釈なのか、その点ちょっとお伺いしたいと存じます。)
今度の日影規制の際に、測点を第一種住専地域で1.5m、一応1.5mといたしておりますのは、一階の窓ということを意識して定めておるものでございます。その場合あくまで排出する日影の基準でございまして、日影というのは朝から晩までずっとこう回っていくわけでございます。したがいまして、一日じゅう当たらないという趣旨ではなくて、何時間そういうものが複合して当たらないということを基準の中で取り入れているわけでございます。したがいまして、1.5mのところで測点をいたしましても、その日の一日のうちには下の方にも日が当たる場合があるということでございます。
(質問:[前略]その点、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。)
冬至の場合に太陽の位置を定めまして、それで1.5mの測点をするというふうな図表をつくることになっております。その辺の場合の日本におきます傾斜角度から見まして、われわれ普通考えまして、投影の角度はやはり一階の窓ぐらいというふうにいまでも考えるわけでございます。
それから、やはり下のところには日が当たらないのではないかということでございますが、実は一種住専についての試算を私きょう持っておりませんが、いまの二種住専につきましても同じような問題があるわけでございます。4mで2階の窓のところを基準にしております。そうしますと、1階は要らないのかという問題が直ちに出るわけでございます。したがいまして、その辺につきましての試算等を実は私もちょっと手に持っておりますので、同じような考え方でございますからその数字を申し上げさしていただきますと、たとえば二種住居専用地域で今回の中の基準が適用されている場合に、南側に5階建てのポイント型が立っています。その場合3つの基準がありまして、真ん中の基準を採用したとして検討してみますと、建築物が建築された場合に北側の敷地が得ることができる日照、これにつきましては南庭の幅に応じて差があるわけでございます。南側の庭が3mしかないという場合には2階は2時間半になります。その場合にもやはり1階も2時間半日が当たるということになります。南庭が5mある場合には2階が4時間当たります。1階が約3時間ということになります。それから南庭が7mの場合には2階は7時間半当たり、1階は約3時間半当たるということでございまして、いずれも2階を基準に規制をいたしましてもにも1階にも全部日が当たるということになるわけでございますが、基準としてとらえるのにとらえやすい二種住専の場合には、2階の窓の辺を使ったということでございます。したがいまして、その測定の基準にいろいろ1.5m、4m等使っておりますけれども、決してそれ以下のところは日が当たらなくてよいという判断ではなく、当たるんだけれども、やはり基準として決めやすいところをポイントに置いて基準をつくったというのが実状でございます。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.9〜10)
まず敷地外5mととりましたのは、通常の住宅地で南庭、南に庭がございます、そういったものを考えまして、平均的に建物のある位置ということで5mということをとったわけでございます。これも実態調査等でございます。
それから,10mについてはちょっと御説明がむずかしいわけでございますが、いわゆる2つの、隣のビルと今度建てるビルとの影が重なり合うというようなことで10mというものをとったわけでございます。
(質問:[前略]それから、さっき5m、10mについても、実態調査がどうも中心のようですが、それならそれで、どのような地域のどれだけの実例がどのように調査されたのか、こういうこともちゃんと出してもらわないと、これが法律化されて、全部従いなさいと言うにしては、余りにもお粗末過ぎるように思うのですが……。)
昭和48年の住宅統計調査によりますと、全国の市部で一戸建て、長屋建ての住宅の平均の敷地面積というものが206平米ということになっております。したがいまして、そういった206平米の住宅敷地に平均的な規模の90平米の住宅が建った場合にどういうことになるかということから割り出したものでございます。
(第78国会 参議院建設委員会議録第5号、76.10.28、p.16〜17)
(質問:今度の改正案では、敷地の境界線からの日影のはみ出し許容距離を5mとした。この5mとした根拠は何ですか。)
一応いろんな住宅地におきます平均的な敷地を考えまして、その敷地に平均的な住宅が建ったといたしました場合に、おおむね5mぐらいの南庭がとれるであろうというようなことを想定いたしました。これは測定の基準として一応5mというものをとったわけでございます。
(質問:ここで問題が起きるんですね。救仁郷さんは衆議院の去年の12月3日の答弁で、昭和48年の住宅統計調査によると、全国の市部で一戸建て、長屋建ての住宅の平均の敷地面積というものが206平米、したがって、そういった206平米の住宅敷地に平均的規模の90平米、100平米の住宅が建った場合にどうなるかというので5mをとったというふうに言っていますが、そうなると、住宅平均の敷地面積と、平均面積ですね、これを基準にして5mをとったということになりますね。そうすると、先ほどの局長の平均をとるんじゃないんだという考え方と大きな食い違いがあると思いますが、いかがですか。)
敷地面積の方はむしろ平均でとりました。日照享受時間の方は、その3分の2の方々が享受していられる日照時間ということでございます。
(質問:日照時間は3分の2と、敷地の方は平均でとったという答弁。救仁郷さんにお伺いしますが、全国の市部で、つまり206平米というと大体60坪ですな、大体60坪というこういうのが平均だと言われるけれども、60坪以下の住宅が市部で何割ぐらいあるかお答えいただきます。)
正確には、統計ここへ持ってきておりませんが、統計から調べますと、恐らく6割以上ぐらいが平均以下ではないかというように考えております。
(質問:ここに昭和48年の住宅統計調査報告の大都市圏があります。私これで計算してみました。そうしますと、京浜大都市圏、これは平均が全国の都市部のさっきの206平米と大体同じで203平米、203平米が京浜の大都市圏、ここで199平米以下、これのパーセンテージでは、いま6割以上と言われましたけれども72.53%、つまり7割以上が200平米以下なんですね。京阪神を調べてみますともっとひどい。ここは平均が151平米で全国の市部の平均よりももっと狭い。そのために199平米以下の住宅は78.33%、8割に達するんですね。そうすると、いま5mで平均と、平均の住宅の広さからいって5mというのを割り出したと言われたけれども、5m以上を日影規制するわけだから、5m以内の狭い庭しか持っていない住宅の場合には、この基準だと切り捨てられるんですよ。切り捨てられるというのが京浜の大都市圏で72.53%、これは3分の2になっちゃうんですね。京阪神では約8割、78%、5分の4近くの住宅があなたの言う平均という5mというところからは落ちてしまうんですね。この点いかがですか。)
確かにこの基準から見ますと、基準を設定いたしましたときばそういうことが言えるかと思います。ただ、この基準を設定いたしましたときは、目標とする、何と申しますか目標時間のそのある地域で3通りぐらいあるわけでございますが、その中の中間値としてこの基準を設定しております。したがって、そういう小さい区画の多いようなところ、そういうところでは厳しい一つの上の、3段階各地区であるわけでございますが、基準を採用する、そういうことにより対応できるんじゃないかというように考えております。
(質問:これは全く言い抜けですよ。あなたは先ほど、平均をとっていると、それで大体6割ぐらいあるだろうと思ったけれども−御存じない。京阪神では8割の住宅が5mに入っちゃうんです、5m以内に。それから京浜でも7割以上の住宅が入っちゃう。しかもあなた、いまそのために3段階ちゃんととってあると言われたけれども、3段階とったのは日照時間であって、この5mというのはどこでも同じですよ、一種住専だろうが、二種住専だろうが。この5mを、じゃ条件に応じて、たとえば京阪神については4mにするとかということが可能なら、いまの言い抜けもありますけれども、全くそうなってないんですから、5mは全部一律じゃありませんか。住宅局長いかがですか。)
山岡政府委員(住宅局長):いろんな数値が検討されたわけでございますけれども、5mは、先生おっしゃるとおり、いずこの場合でも同じでございます。同じでございますけれども、5mのところの南庭がない場合に、それではそのところは全部真っ暗になってしまって日が当たらないかというと、そういうことではございません。ちょうど隣がむしろ空き地であっても、5mのところに3時間以上の影を出さないというふうな規制をするわけでございますから、当然、基準の一つとして5mの時点をとらえた、複合の場合は10mの時点をとらえたということでございまして、その5mの中でも、たとえば3時間以内の日影ができるかもわかりませんが、さらにもっと近いところでも全然真っ暗ということはない。必ず日は当たるわけでございます。
それぞれの建物が周辺に及ぼす日影を一定限度内に制限するような日照基準のあることは、早く建てた者勝ちを防ぎ、法の下での平等という点で意味があり、また建主や建築家にとっても計画の目安をつけ易い利点はある。しかし反面、この方式には次のような問題がある。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.10〜11)
(質問:もう私もちょっと時間を制約されておりますので、先を急ぎますが、そこで、ある権威ある指摘として、住宅局長あてに日本建築学会の日照問題研究会が提言をしていますね。御存じだと思うのです。この中でこういう指摘があるのです。「日照紛争とは、ある建物の建設者と、この建物によって日照を阻害されようとする近隣居住者との争いであり、個々のケースごとの問題である。これに対して日照問題とは、都市において、限られた量の日照を配分するルールをどのように定めて、都市の開発、整備を行うかという、都市の問題である。日照紛争と日照問題とは、もちろんたがいに深い関係にあるが、紛争が起こりにくくなったからといって必ずしも日照問題が正しく解決したとはいえない。」つまり、日照紛争と日照問題というものを関係づけながらも、一応違った課題としてとらえているわけです。このような指摘、見解に対して建設省はどういうように考えておるのですか。)
建設省の立場は、公法上の規制でございます。したがいまして、いま御指摘ございました紛争そのものの直接のあれを考えているのではなくて、都市として環境のいい町づくりができるようにという観点からつくったものでございます。
(質問:そうだったとしたら、このいわゆる基準のとり方がきわめて客観的根拠に乏しいし、しかも、しばしば言われるように、この日照問題というのはもっとほかのファクターもたくさんあるわけですね。ですから、そういうふうなあらゆるものが入っていなかったら本当の日照問題の解決にはならないということになるのじゃないですか。いまの答弁は、そういう点では法改正の内容とは非常に矛盾した答えだと私は思うのです。
さらに、こういう指摘があります。「個々の紛争の処理がすなわち日照問題の解決とは必ずしもならない」「本来、法律は、市民のコンセンサスがあるときこれに則って定められるべきもので、法律が先行すべきものではない。日照問題については、建てる側と近隣住民との間に観点のくい違いがあって、どのような解決が望ましいかについて、市民のコンセンサスがまだえられていないところに根本的な問題がある」こういう認識なんですね、建築学会の指摘は。こういうふうな建築学会のいわゆる専門家の認識に対して、建設省はどういう見解を持っていますか。)
それは、建築学会という名がついておりますが、建築学会としての正式なあれでなくて、建築学会の中でのあれでございますが、それにつきまして私どもは、紛争が非常に多発している、これに対して、先ほど御答弁申し上げましたように、やはり公法上の基準をつくる必要があるという立場に立って基準をつくっているわけでございます。
(質問:おかしいじゃないか。さっきあなたは、この法律改正は直接紛争の解決を目的とするものじゃなくて、日照問題の解決を目指すんだと、こう言ったでしょう。しかしいまは、逆に今度は紛争が多発している、これはほっておけないからこの解決を目指すんだというふうな趣旨じゃないですか。もっと首尾一貫した答弁を、これは局長の方で責任を持ってやってください。)
山岡政府委員(住宅局長):先ほど御答弁いたしましたとおり、今回は日影の排出基準ということについて規制を決めております。これはやはり将来の望ましい都市をつくります場合に、日照のことも考慮しながら、都市としていい住宅形態のものが建つようにということを念頭に置いてつくったというものでございます。ただ、その結果といたしまして、いまのような平和的なものを念頭に置きながらそういう基準を決めておりますので、結果として紛争は相当減るということでございます。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第4号、75.12.05、p.)
第二は、いわゆる地方自治体による日照確保のための指導要綱ないしは条例の驚異的な発展でございます。建設省の調査によりましても、全国で約200の自治体が指導要綱あるいは条例を設け、驚くべきことに、その4分の3に当たるものがいわゆる付近住民の同意を義務づけているのであります。
これを東京だけに限って見ましても、多摩26市のうちすでに22市が条例ないし要綱を持ち、そのすべてが同意を義務づけているのであります。都内23区においても、14区が指導要綱を有し、2区が現在起案中というところであります。注意すべきは、第一に、この同意要綱を持つ自治体において現在まで大きな矛盾が存在せず、むしろ住民より積極的に歓迎、推進されているという事実であります。
第二に、基準値を擁している指導要綱あるいは条例においても、本改正案のように商工業系を全く野放しにして規制している例はほとんどなく、あってもごくわずかなものであります。
第三に、最も忘れてならない点として、指導要綱の存在の有無にかかわらず、現在も全国至るところに、その用途を問わず、場所を問わず日照権を主張する住民運動は存在し、しかも建築主と住民との間で生ける法としての日照権の存在が了解されており、建築主もまた了解を得て後建築をするというルールが一般化しているという現実であります。
この三点を到達点として冒頭に述べた法例化について意見を述べますと、あり得べき、またあらねばならない法制化とは、住民の合意を基礎とした法制化でなければならず、建築公害対策市民連合の提起した日あたり条例はその代表的なものであると考えられます。
この立場から今回の改正案を見ますと、遺憾ながらこの法案は右の三点の成果から後退するものであり、なお後退するにとどまらず、三点の成果をことごとく否定し去る危険を有するもので、まことに遺憾と言わなければなりません。
この法案は、住居系地域とそれ以外のものとに区分し、住居系地域についてのみ基準を設定し、日影の規制を図ることを骨格としております。しかしながら、第一に、この法案の基礎をなすところの用途区分それ自体合理的なものであるとは解しがたいこと、そのことは最近の宇都宮地方裁判所における地域指定処分の取り消し判決によって明らかであります。
第二に、商工業地域等を除外した点でありますが、日本の、住居と商店、あるいは住宅と中小工場が混合、密集している都市の現状を見ますと、ここに一切の法的保護を与えず、しかも住居系地域のみについて与え、逆に商工業地域については一切法的保護は容認されないということであります。これは先ほど言いました判例の趣旨及び指導要綱にも抵触すること明らかであります。
第三に、設定された日影規制基準でありますが、これも合理的科学的な根拠となっているとはとうてい思えません。この基準は、世論にも、基準を定めた判例にも指導要綱にも抵触すること明らかであります。
第四に、法律の性質上、法は、今回の法案によりますと、北海道を除いて沖縄から青森まで全国一律に適用されます。気侯と風土を含むその地域、そしてその都市に対し深く根づいて存在しているところの日照権あるいはその総称としての住環境について、事の性質上その保護を図るべきはその地域に密接している自治体であること明らかであります。これを全国一律に行うことはむしろ都市を破壊する元凶ともなりかねないと考えます。
(第76国会 衆議院建設委員会議録第3号、75.12.03、p.6〜7)
(質問:そもそもの事の起こりが日照紛争にあったというような話なんだけれども、そういうことについては、地方自治体の条例や指導要綱などがそれなりの役割りを果たしておったわけでありますが、これは先国会でも答弁はあったようですけれども、改めてそれら条例、指導要綱等の果たしている役割りに対する評価を聞いておきたいと思います。)
われわれ基本的には、今回のような規制は財産権の制約でございますので、法律に基づいてやるべきであると考えております。したがいまして、それに基づく条例等々で規制をするのが本来正しかったと考えているわけでございますが、国におきますそういうふうな法案の整備ができるまでの間に、いまの要綱等におきまして事前の公開制、同意制もしくはいろいろな技術的な指導等をとられておりまして、その間の空白を補っていただいたというふうに考えております。いままでの−国の法律の規制について今回こういうような規制を設けるということになりますと、それらの点につきまして抵触するところについては使命を終わっていただくことになるというふうに考えておる次第でございます。
(第78国会 参議院建設委員会議録第5号、76.10.28、p.30)
政府は、本法の施行にあたり、次の事項について、所要の措置を講ずべきである。
第77国会における衆議院建設委員会の議決の際も附帯決議が行われていますが、日照に関係する内容は含まれておりません(衆議院建設委員会議録第10号、76.5.21、p.6)。
対策のひとつは、現行の日影規制の手法を拡大し、5m規制値と10m規制値(いずれも敷地からの距離)の両者に加え、20m、30mや50mの規制値を追加することです。日影規制が登場した頃は斜線制限や容積率の規制が現在より厳しく、これほど高層の建物が建つことは想定されなかったので、10m値までで大丈夫だったかもしれませんが、高い建物ほど遠くまで影が伸びるので、現在では全く不十分です。緯度で違いがありますが、少なくとも建物の高さと同程度、できればその2倍程度の距離までは、日影時間のチェックを行うべきだと思います。
もうひとつの方法は、規制が対象とする時間帯を限定することです。先ほど、「朝から夕方までの間を考えると、太陽の光は数十軒の上を通ってきている」はずだと書きましたが、時間帯を狭めると通る家の数が少なくなります。とくに、朝と夕方は太陽の高さが低くなっているので、日光がたとえば地上50mに達してから地面に達するまでの距離が長く、それだけ多くの家の上空を通過します。日照の強さを考慮して時間帯を9時から15時までにすると、規制の効果がかなり出てきます。
上に説明した2つの対応のうち、私は後者の「時間帯を限定する」方法が優れていると思います。この方法なら、先にあげた3つの問題のうち、2番目だけでなく、1番目と3番目に対してもかなり効果を期待できるからです。現行の日影規制は、北海道だけ9時から15時までを有効日照時間帯とし、それ以外はすべて「8時から16時まで」と一律です。第77国会で、規制対象時間を条例に委ねる修正案を提案した井上議員は、北海道から沖縄まで、日射の強さや太陽の角度が違うことに対応するための修正だと述べていますが、規制する日影の時間数だけでこの地域差に対応するのは無理です。むしろ、日射の強さや太陽高度へ対応するため、地域に応じて自治体が有効日照時間帯を決定すべきではないでしょうか。