アウトバーン逆走 − どういう場所が危険!なのか
ブログに紹介したように、2012年10月にルール地方東部で5名の死亡事故、翌11月には南ドイツで6名の死亡事故と、
ドイツの高速道路アウトバーンで、逆走による重大な事故が続きました。前者は日曜日の午前2時頃、24歳の男性が自殺したもので、防ぎようがありません。後者も20歳の男性が引き起こしたものですが、日曜の朝6時頃で、当日は霧が発生していたそうです。若者を解剖したところ、アルコールを飲んでいたことがわかったそうですが、事故との関連は不明です。
この2件については、「逆走」と聞けば高齢者をイメージする人が多い
日本とは状況が異なるようですが、もちろんドイツにも高齢者による逆走があります。2012年12月末に、
ドイツ自動車クラブ(ADAC)が、2010年と2011年の逆走に関する検討を発表したことが報道されました。逆走ではドイツの方が先輩格のようで、
日本に参考になる点もあると思うので、報道内容を紹介します。
なお、「ドイツ自動車クラブのホームページに詳しい報告書があるはずだ」と思って探しましたが、見つけられませんでした。状況から見て、「報告書がまとまったから発表した」のではなく、「重大事故で不安が広がっているので、実態を知らせ、それほど怖がらなくても良いと知らせるために急いで公表した」ものだと思います。
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逆走は全体で何件ほど起きているのでしょうか。
- 残念ですが、逆走の実件数はわかりません。しかし、「逆走している車がある」という「通報件数」はわかります。ドイツでは、アウトバーンで逆走を発見した場合には、危険なので直ちに連絡するのが普通で、通報を受けると、ラジオで警告が流され、警察はインターチェンジを閉鎖する等の対処を行い、事故の予防に努めます。2012年11月の6名死亡事故の際も、事前に逆走の連絡が入り、ラジオに警告が流され(事故の約2分前だったそうです)、警察が現場に向かいましたが、警察が現場に到着する前に事故が起きたそうです。だから、この件数は、かなり実態を反映していると考えて良さそうです。
- ADACによると、逆走通報の件数は年2800件ほどあり、そのうち2000件近くがアウトバーンです。もちろん、件数は年によって増減していますが、この5年間は1800〜2000件に安定しており、増加や減少の傾向は認められません。ドイツのアウトバーン総延長は12,800キロ(2011年)なので、同年の逆走通報件数1914件で道路延長あたりの件数を計算すると「100キロ当たり年15件」となります。(12.12.30)
逆走による事故の状況はどうなのでしょうか。
- ADACによると、アウトバーンで生じた死亡事故のうち、逆走が原因となった事故は3%で、死者数では4%だそうです。年間の死者数にすると、約20名になります(ということは、アウトバーンで年間に約500名の死者が生じている計算になります)。死者の比率が死亡事故の比率より高いので、逆走の場合は複数の死者が生じる可能性が高めであることが分かります。
- 逆走件数と死者数の関係は、ほぼ「逆走100件に対して死者が1名」という計算になります。だから、ADACは「多くのドライバーは、逆走事故で犠牲者になる危険を、実際よりも大きく考えている」と、心配しすぎないように呼びかけています。(12.12.30)
どういう場所や時刻に多く生じているのでしょうか。
- 逆走を分析したところ、インターチェンジ間の距離が短い場所で多く生じていることがわかりました。アウトバーン一般区間でUターンによって逆走が始まることもありますが、逆走の半数はインターチェンジから入る際に生じているので、その可能性がある地点の密度が高いほど多くなる、というわけです。これ以外に、サービスエリアから出る際や、ジャンクション、あるいはアウトバーンの起終点で逆走が開始しているそうです。
- 時期的には、土曜と日曜には平日の2倍近く逆走が多く、時刻では夜20時と朝5時の間の暗い時間帯のリスクが高いことがわかりました。アウトバーンは日本の高速道路に比較して照明が少なく、車のヘッドライトが頼りなので、暗い時には標識が見えにくく、すぐ前を走る車がない時は、手探りで進む状況に近づくためでしょう。ただ、年間で見ると、夜が長い冬季ではなく、8月の件数が最も多く、次が9月だそうです。
- 逆走するドライバーで目立つのが、アルコールや薬物を摂取した若者と、治療薬で障害を受けている高齢者だそうです。2012年11月に6名の死亡事故の原因となった若者は、飲酒していたことが解剖でわかっており、前者に含まれます。彼がどこで飲酒したのかは報道されていませんが、ディスコ帰りの若者による逆走も多いそうで、土曜と日曜、そして夜間に逆走が多い点は、これによって説明できるそうです。
- 地域的に見ると、逆走はアウトバーンの密度が高い大都市周辺やルール地方周辺で多く、とくにルートが複雑に入り組み、インターチェンジの間隔が短いところで増加するそうです。逆に件数が少ないのが旧東ドイツで、年間に7件/100キロと全国平均の半分しかありません。新しいアウトバーンが多く、複雑なルートは少なく、標識も良く整備されているからだろう、と説明されています。(13.01.05)
日本より件数が多いのはなぜなのでしょうか。
日本の高速自動車国道も、すでに約8,000キロに近づいており、ドイツの15件/100キロで計算すると、年間1200件ほどの逆走が発生することになります。ウィキペディアの「逆走事故」によると、年間に千件程度の逆走が生じているようですが、これは都市高速道路なども含めた件数です。その後、ネットを調べていて、「2年間で447件」という情報(日本経済新聞、2012/9/28)を発見しました。1年では220件程度になるので、100キロあたりの逆走件数は、日本の高速自動車国道と比較してアウトバーンは5〜6倍多いことになります。なお、この記事によると、ほぼ逆走50件に対して1件の割合で死亡事故が起きている計算になり、こちらの率は日本がドイツの倍になります。
- 日本の方が逆走が生じにくいことは、いろいろな面から説明できます。第一は、逆走の起点となるインターチェンジが少ないことです。以前、ルール地方について調べてみたことがありますが、ドイツのインターチェンジ密度は日本の2〜5倍という結果になりました。第二の理由が、有料で出入りをチェックしていることです。先のブログ記事に説明しているように、出入口でチェックを行わないアウトバーンでは(走行が有料となる大型トラックも、走行ルートは人工衛星(GPS)で判断され、出入りのチェックはありません)、「上り線の入口と上り線の出口」と「下り線の入口と下り線の出口」がまとめられているのが普通で、入口と出口がすぐそばに並んでいてゲートもないため、出口から入って逆走してしまう危険が高くなります。「入口には入口用、出口には出口用の料金徴収施設」が置かれている日本では、ドイツに比較し、はるかに逆走が生じにくいわけです。
- この他に、日本では照明と標識がドイツより整備されていることも、逆走を減らす効果があるはずです。また、連邦道路を走っていて知らない間にアウトバーン区間に入ることがあるように、アウトバーンと一般の連邦道路との差が少ないことも、逆走を増やす可能性があると思います。有料の日本では、高速道路を走る場合は一般道路とは意識が異なるはずなので、ドイツより気をつけると期待できるのではないでしょうか。(13.01.05/13.01.06更新)
どのような対策が実施され、また検討中なのでしょうか。
- すでに実施されているのが逆走通報のシステムです。逆走に気づいたら警察に連絡し、警察はラジオに警告を流し、同時に現場に急行します。2011年11月末にも、「10月に5名が死亡する事故があったアウトバーン46号線で、土曜日の午前中に高齢夫婦がアウトバーンへ出口から入るのを見た人が通報し、警察がアウトバーンの該当区間を閉鎖して現場に急行したが、車は見つからなかった。おそらく逆走に気づき、アウトバーンから抜け出すことができたのだろう」(逆走に気づいてUターンする際に事故に遭う危険が高いため、停車して警察等の援助を待つのが本来の方法です)という記事がありました。
- 現在検討され、期待されているのが、ブログに写真を紹介した逆走警告標識です。すでに一部区間で試行されており、効果があると確認されれば設置されるでしょう。
- この他にも、いくつか対策が提案されています。逆走の起点となりやすいインターチェンジ周辺について、ADACは、ラインを引いて分かり易くし、対面交通が生じる部分では中央のラインを二重にして矢印を示すこと等を求めています。なお、アウトバーン出口に関し、逆走して入る車を感知してバーを降ろしたり、さらにはタイアをパンクさせて走れなくする方法も研究されているようですが、ADACは「余りに費用がかかり、目標に到達できるかどうかは疑問」とコメントしています。
- ADACはコメントしていませんが、私は「治療薬の障害が疑われる高齢者」による逆走がかなりあるという部分が気になりました。逆走した高齢者にどのような薬が処方されていたかを調べたら、今後の投薬に生かし、逆走を予防できるので、
日本でも調査すべきだと思います。もちろん、それに先立ち、逆走について統計をとり、ADACが行ったように分析することも欠かせません。(13.01.05/13.01.06更新)
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