日本では歩道を人と自転車が一緒に使っていますが、ドイツも同じですか。

• 日本とドイツで自転車の扱いが最も違う点は、歩行者との分離を目ざしていることです。かつて、日本では自転車は「車」の仲間として車道を走っていました。しかし、車との事故が多くなったため、自転車の保護のために歩道を走れるように変更され、各地で推進されています。かなり以前ですが、テレビで「日本の自転車道の９割は歩道兼用」という情報に接した記憶があります。確かに自転車と車の間の事故は減ったでしょうが、今度は歩道を歩く者と自転車の間でトラブルが発生し、歩行者は落ち着いて歩きにくくなり、高齢者等にとっては自転車が脅威に感じられる状況も生じています。自転車は、その性質から歩行者と車の中間に分類されるので、ドイツのように歩道と自転車道を区別するのが歩行者・自転車の両者にとって望ましい本来の姿だと思います。
• 日本人は歩行者と自転車の混在（共存？）に慣れてしまっているので、ドイツの町を歩く時に自転車道に平気で入ってしまう場合があるようです。しかし、これは非常に危険なことですから、十分注意して下さい。（以上、97.12.01）

• その後、日本でも自転車と歩行者間の事故が問題となったこと等により、「自転車は軽車両であり、車道を通行する」という原則が明確にされ、以前の状況やドイツに近づきました（道路交通法の改正による変更だと思い、何年の改正か調べましたが、見出せませんでした）。現在では、次の4つのケースを除き、自転車は歩道でなく車道を走ることになっているそうです。
  • 歩道に「自転車通行可」の道路標識や、道路標示がある場合。
  • 歩道に「普通自転車通行指定部分」の道路標示がある場合。
  • 運転しているのが13歳未満又は70歳以上、または身体の障害を有する者の場合。
  • 車道や交通の状況からみて歩道を通行することが「やむを得ない」と認められる場合。
  最後の「やむを得ない」と認めるのは誰かなど、判断が難しい部分は残っているようです。（23.07.18追加）

自転車は交通手段としてどのように位置づけられていますか。

交差点で曲がる際に、日本のような二段階フックターンが必要ですか。

電車等への自転車の持ち込みはどうなっていますか。

• 交通手段としての自転車の限界のひとつは、あまり長い距離は走れないことです。ドイツでは、自転車を鉄道等に持ち込むことで、この限界を越えようとされています。1987年にドイツを訪問した時、フランクフルトからマインツへ向かうＳバーン（ドイツ鉄道＝旧連邦鉄道の都市郊外路線）に自転車を持ち込むカップルがいて、驚いたことがあります。しかし、後になって都市交通対策として推進されていることを知り、なるほどと思い直しました。（97.12.01）
• 自転車持ち込みが認められている程度は、交通手段や都市によって差があります。まず連邦鉄道ですが、1998年７月現在、449の遠距離列車に自転車持ち込み用のスペースが付いています。１両目か最終車両の端にあり、８台まで載せることが可能です。外側から車両を見ると、窓の下に自転車のマークがついているのでわかります。さらに、117の遠距離列車では荷物用車両に自転車を持ち込むことができます。自転車の持ち込み料金は9.4マルク（101km以上、自転車持ち込み予約料を含む）になっています。次に、近距離列車では日本のＪＲ列車に比較してデッキが広く、そこに１ヶ所あたり２台まで自転車の持ち込みが認められています。なお、持ち込み料は5.6マルク（100kmまで）です。
• シュツッツガルトに関して、都市交通での自転車の扱いを説明しましょう。まずＳバーン（連邦鉄道）では、平日は午前６時〜８時半と午後４時〜６時半の通勤時間帯を除き、自転車持ち込みが可能で、休日は一日中Ｏ.Ｋ.です。
  　シュツッツガルト市が運営している鉄道には、古くからの路面電車（狭軌）と、新しい都市電車（広軌）の２種類があり、場所によっては両方を通すためにレールが３本あります。車両の幅もかなり違い、狭い路面電車の方でも乳母車は持ち込み可能ですが、自転車の持ち込みは禁止されています。一方、都市電車は１車両あたり２台まで持ち込みが許されていますが、乳母車と競合したときには乳母車が優先です。持ち込み可能な時間帯は、連邦鉄道と同じです。なお、バスへの自転車持ち込みは、路面電車と同じく禁止です。
• ところで、シュツッツガルトはすり鉢の底のような地形に発達した都市で、周辺の岡に住宅地が伸びています。ユニークなのが丘の上のデガロホまで通じるアプト式電車で、車両の先に自転車用の台がつけられていて、登りに限っていつでも自転車を載せることが出来ます。シュツッツガルトでは1868年に鉄道馬車が開通していますが、このアプト式鉄道はデガロホへの交通のために1884年に建設された古いもので、京都に路面電車が登場したのと同じく1895年の電車に変わりました。その後、都心へ乗り換えずに行ける路面電車（その後、広軌の都市電車になっています）が開通したため、時間がかかるアプト式電車の乗客は少なくなってしまいました。実は私はデガロホに１年間住んでいたのですが、大学へ行くのにアプト式電車を利用したことは一度もありません。このアプト式鉄道の外側には20台の自転車を載せられる台が付けられ、1983年５月29日から登りに限って自転車を載せることが出来るようになりました。なお、安全上の理由のため、下りは利用できません。
  
• 最後になりましたが、シュツッツガルトでは自転車持ち込みに子供の乗車料金が必要とされます。（98.09.19）

よくヘルメットをかぶって乗っている姿を見ますが、義務ですか。

• ドイツでは、よくヘルメットをかぶって自転車に乗っている子どもを見かけますが、これは義務ではありません。ヘルメットなしで自転車に乗っている子どももたくさんいます。「自転車にヘルメット」という考えはアメリカから伝わって来たそうで、自転車クラブ等がヘルメットのキャンペーンを行った結果、多くの子どもがヘルメットをかぶって自転車に乗っています。1998年のレポートによると、旧西ドイツの地域では、５歳以下の子どもで54％、６〜10歳で30％が着用していましたが、旧東ドイツ地域では着用率が下がります。大人を含めた全体の着用率は５％程度になるそうで、同じく着用を宣伝しているスウェーデンでも２％程度だそうです。
• ヘルメット着用を義務化しようという話もあるそうですが、自転車関連団体から「ヘルメットを義務化したら自転車の利用が減るのでは・・」という不安が表明されています。現に、オーストラリアのある州が着用を義務化したところ、自転車の利用が明らかに減少したそうです。なお、ターバンでわかるように、頭や髪を重視しているイスラム教徒のいるインドでは、オートバイでのヘルメット義務化の議論が宗教問題になったそうです。
• ヘルメット推進の理由は、自転車に乗っている人が交通事故の犠牲となったケースでは、頭に受けた損傷が致命傷となっていることが多い点にあります。以前、ドイツの雑誌で「自転車で死亡事故が起きると、ヘルメットがよく売れる」という記事を読んだことがあります。しかし、自転車用ヘルメットはオートバイ用に比較して簡易なものが多く、どれだけ効果があるかは疑問です。自転車用ヘルメットにはあまり効果がないと言う商品テストの結果が発表され、売上が大きく落ちたこともあるそうです。問題はテストの方法と基準の設定で、「どんな事故でも大丈夫」というヘルメットを作ることは無理ではないでしょうか。自転車は車の犠牲になることが多いので、車との分離を含め、総合的に対処することが必要だと思います。（98.01.05／05.12.05更新）

安全のため三角の旗がついた自転車を見かけることもありますが。

• ドイツでは、子どもが三角の旗がついた自転車に乗る姿を見かけることがあります。これは、車から、小さい子どもの自転車がよく見えるようにという配慮です。しかし、普及率はヘルメットよりさらに低く、街を歩いても、三角旗のついた自転車に出会うことは希です。
• むしろ、三角の旗は、次の項目に説明している自転車用トレーラーでよく見かけます。とくに子どもを乗せるタイプのトレーラーでは、旗がついていないものを見かけることはほとんどありません。
• 右上の写真は、フライブルクの川沿いで撮影した、父親と子どものサイクリング光景です。ヘルメットを着用した子どもを先に行かせ、父親は下の子どもが乗る三角旗つきのトレーラーを引っぱっています。写真でわかるようにトレーラーは高さが低いので、高さがほぼ人の頭と同程度の旗がつけられるわけです。なお、この自転車道路を歩行することは禁止されてはいませんが、「自らの責任で危険に注意」ということで、ゆっくり散歩したい人のためには、反対側の堤防に歩行者専用道路が整備されてます。（05.12.05）

荷物の多い時や雨の日への良い対策はありませんか。

• 私が子供の頃の日本では、荷物の運搬によくリヤカーが利用されており、自転車の後ろにリヤカーをくくりつけて走っている姿を町のあちこちで見かけたものです。ドイツには、このリヤカーを近代的にしたような自転車用トレーラー(ドイツ語ではアンヘンガー="Anhaenger")というものがあり、自転車に連結して荷物の運搬等に使われています。リヤカーに比べるとスマートで、幅もそんなにありません。もっとも、私がドイツで生活していた70年代には見かけた覚えがないので、80年代以降に広がったものだと思います。
• 現在ドイツに住んでいる（あるいは最近まで住んでいた）方にメールで問い合わせたところ、次のような情報が寄せられました。『うちの町ではよく見かけました。荷物を乗せるタイプと、子供を乗せることが出来る併用タイプがありました。後者は屋根がついていて、雨の時でも使えるようなものが多く、購入を検討したこともあります。』『私の住んでいるテュービンゲンではとてもよく見かけます。荷物よりは子どもを乗せている人が多いです。赤ちゃんのこともありますが、もう少し大きい就学前ぐらいの子どもを２人ぐらい乗せて走っているお母さんもよく見かけます（本当にドイツの母はたくましい！）。屋根というよりも、ビニールでできた幌がかかっています。少しぐらいの雨や寒さは防げるようになっています。』『きちんとジッパーがかけられるようになっていましたし、座席には、子供二人分のシートベルトまでついていました。私が見たことがあるのは、前を向いて横に並ぶタイプで、幼稚園児が二人やっと乗れるくらいのものでした。自転車に乗せられている時と同じように、子供もヘルメットをかぶって乗っていたことが多かったですね。』　子供を乗せるタイプのものは丈夫に造られていて価格も高く、10万円近くするそうです。自転車用トレーラーを日本のような歩道と共同の自転車道で利用することは困難で、歩道と区別された自転車道が不可欠のように思います。なお、最新の情報によると太陽電池つきのものも売られているようで、家族でピクニックに行く時などに便利だと宣伝しているそうです。
• 自転車用トレーラーについて調べていて、ドイツで開発されたものではないのかも知れない、という感じがしてきました。ドイツで売られている自転車用トレーラーに、オランダ、デンマーク、さらにはカナダやアメリカ製のものがあるとわかったからです。そこで、アメリカ滞在の経験がある方に聞いたところ、『よく近所で見かけるのは、自転車で牽引するタイプのもので、皆さん子供や犬を載せて走っています。近所の自転車屋でも売っていました。』ということでした。トレーラーを見かけない日本の方が特殊なのかも知れません。（97.12.01／97.12.08更新）

街角で見かける真っ白や真っ赤に塗られた自転車は何ですか。

自転車がよく利用されている都市を教えて下さい。

自転車高速道など、自転車に関する新しい話題はありませんか。